2026年7月21日、USA Today Co. の CEO マイク・リード氏がこう言い切った。
"It's time to take a stand and say enough is enough."(もう十分だ。今こそ立場を明確にすべき時だ)
Wall Street Journal の報道を伝える複数のメディアによれば、リード氏はこの1年で Google からの検索トラフィックがほぼ半減したと述べ、傾向が続けば Google のクローラーを完全に遮断する用意があると明言したという。同じ週、Reuters・People Inc.・Reddit も、Google との関係を見直す発言を相次いで残した。
当ブログは archives/85「守る側の設計思想」以来、一貫して「ブロックせず、検証してから個別に allow する」という立場を取ってきた。だが同じ週、検索トラフィックへの依存度がはるかに大きい大手メディアは、真逆の方向——遮断——を検討し始めた。この記事は、その分岐点がどこにあるのかを整理する。
「もう十分だ」と言った週に、何が起きたか
2026年7月21日から22日にかけて、Wall Street Journal がまとめて報じたとされる内容を、複数の二次情報が伝えている。当ブログは WSJ の原文に直接アクセスできなかったため(後述)、以下は Newsweek・PPC.land・DigitalApplied など、WSJ の報道を引用する形で伝えた記事群からの要約であることを先に断っておく。
登場した発言者と立場は次の3つに大別できる。
- 「立場を表明した」USA Today Co. —— CEO マイク・リード氏。「もう十分だ」と述べ、ライセンス契約のない相手のクローラーは遮断すると明言したと複数のメディアが伝えている。
- 「経済的なトレードオフを検討中」Reuters —— President ポール・バスコバート氏。「We are certainly looking at the economic trade-offs between search and AI summaries.」(検索とAI要約の経済的なトレードオフを、間違いなく検討している)と述べ、消費者向けニュース製品での Google ボット遮断を検討していると報じられた。
- 「100%検討対象」People Inc. —— CEO ニール・ヴォーゲル氏。「Turning them off and blocking them entirely is 100% on the table.」(オフにして完全にブロックすることは100%検討対象だ)と述べたと報じられている。
加えて Reddit も、2024年2月に Google と結んだ年間6,000万ドル規模のAI学習データ・ライセンス契約の更新交渉が難航していると報じられ、2026年7月22日には株価が一時8%超下落した。Reddit の CEO スティーブ・ハフマン氏は同年第1四半期の決算説明会で「We have important partnerships with both Google and OpenAI. Those are very meaningful to us, and I think it's mutual.」(GoogleともOpenAIとも重要なパートナーシップを持っている。双方にとって意味のあるものだと思う)と述べていたが、その関係が揺らいでいることを市場は素早く織り込んだ形になる。
数字が一致しない —— 二次情報を並べて分かったこと
この記事を書く上で、最も正直に書かなければならないのはここだ。トラフィック減少率について、複数の二次情報が異なる数字を報じている。
ある記事(PPC.land)は「WSJ が2026年7月22日に Semrush のデータを修正した」としてこう伝えている(2025年6月〜2026年6月の12ヶ月間、Semrush調べ):
- USA Today: 28%減少 / Reuters: 35%減少 / Business Insider: 43%減少 / Washington Post: 44%減少 / Time: 27%減少 / Wall Street Journal: 18%減少 / Politico: 20%減少 / CNN: 31%減少
一方で、別の記事(DigitalApplied・TweakTown・TechSpot など)は次の数字を伝えている:
- Business Insider: 85%超減少 / USA Today: 約50%減少 / CNN: 約25%減少 / Politico: 約23%減少
同じ期間・同じ出典(Semrush)を指しているはずなのに、Business Insider だけで「43%」と「85%超」という2倍以上の開きがある。原因を特定するには WSJ の原文にあたる必要があるが、当ブログは WSJ・NYT のいずれの記事本文にもアクセスできなかった(ペイウォールおよびアクセス拒否のため、詳細は末尾の到達状況表を参照)。
ここで断定はしない。むしろこの食い違い自体が、この記事のテーマと地続きだ。一次情報を自分で読めない状態で、二次情報の数字をそのまま持ち込むと、どちらの記事を信じるかで結論が変わってしまう。当ブログが確認できたのは「複数の大手メディアで、この1年、大幅な検索トラフィック減少が報じられている」という方向性であって、個々の正確な減少率ではない。この記事では以降、数字を挙げる際に必ず出典と「報じられている」という留保を付ける。
なぜ「オンオフ」で解決しないのか —— 同じクローラーという壁
ここが今回のテーマの核心にあたる。People Inc. の CEO ニール・ヴォーゲル氏は、2025年9月12日付の TechCrunch のインタビューで、遮断が簡単ではない理由をこう説明していた。
"Google has one crawler, which means they use the same crawler for their search, where they still send us traffic, as they do for their AI products, where they steal our content."
(Googleのクローラーは1つしかない。つまり、まだトラフィックを送ってくれる検索と、コンテンツを奪っていくAI製品の両方に、同じクローラーを使っているということだ)
"Google's crawler can't be blocked because doing so would also prevent the publisher's websites from being indexed in Google Search, cutting off that '20%-ish' of traffic that Google still delivers."
(Googleのクローラーはブロックできない。ブロックすれば、Google検索でのインデックス自体が止まり、今もGoogleが送ってくれている「20%程度」のトラフィックまで失うことになるからだ)
この構造は、当ブログがarchives/91「Verified AI Agent 37体を個別allowした実装ログ」やarchives/93「Cloudflareが『検証』の定義を変えた日」で扱ってきた Cloudflare の仕組みと対照的だ。Cloudflare の Bot Management は Search・Agent・Training の3分類でクローラーを識別でき、UA単位で個別に allow / block を設定できる。だが Google は違う。Googlebot 自体は検索インデックス作成とAI Overviews生成の両方に使われており、AI学習だけを止める Google-Extended というトークンはあるものの、これは「学習への利用」を制御するだけで、「AI Overviews に表示されるかどうか」は制御しない。つまり publisher 側から見ると、検索とAIの境界線がそもそも技術的に引かれていない。
ヴォーゲル氏はこの状況を「意図的な悪質行為」とまで表現している——「They know this, and they're not splitting their crawler. So they are an intentional bad actor here.」(彼らはこれを分かっていて、クローラーを分割していない。だから、意図的な悪質行為者だ)。この主張の妥当性を当ブログが判定する立場にはないが、少なくとも「ブロックする」という選択肢が、多くの publisher にとって「全部を失うか、何も変えないか」の二択に近い形でしか存在していない、という構造上の事実は確認できる。
規制の圧力と、すでに始まっていた対立 —— 7月は突然ではなかった
2026年7月の「100%検討対象」発言は、ある日突然出てきたものではない。少なくとも1年近く前から、法廷と規制当局の両方で対立の火種はくすぶっていた。
もっとも早い動きは2025年9月12日、Rolling Stone・Variety・The Hollywood Reporter・Billboard などを傘下に持つ Penske Media Corporation が、Google を相手取って101ページに及ぶ連邦反トラスト訴訟を提起したことだ。訴状は、Google が publisher に対し、コンテンツをAIシステムに無償で提供するよう事実上強制しながら、同時に AI Overviews によってトラフィックを減らしている、と主張している。訴状によれば、Penske 傘下サイトへの Google 検索のうち約20%で AI Overviews が表示されているという。Penske Media は、AI Overviews を理由に Google を提訴した最初の大手米国 publisher になった。USA Today もまた、広告テクノロジー分野での独占的行為を主張する別の反トラスト訴訟を Google に対して起こしている最中だと報じられている。
規制当局側も動いていた。英国の競争市場庁(CMA)は2026年1月、publisher が順位への不利益なしに AI Overviews / AI Mode から自サイトを除外できるよう Google に求める措置を提案し、同年6月にはこれを行動要件(conduct requirement)として正式に課した。archives/82で取り上げた Search Console のAI除外トグルは、この CMA の圧力を受けて実装が急がれたものだ。
ただし Google 自身、この分離が簡単ではないと繰り返し説明してきた。2026年2月、ロンドンで開催された FT Strategies のカンファレンスで、Google のニュース・書籍パートナーシップ担当マネージングディレクター(欧州)スリナ・コナル氏はこう述べたと報じられている。
"Because AI is integral to how search works, implementing the new controls is a complex engineering, huge engineering project, and we have been highly intentional in our approach."
(AIは検索の仕組みに不可欠な要素になっているため、新しいコントロールの実装は複雑で巨大なエンジニアリングプロジェクトになる。我々はこのアプローチに極めて意図的に取り組んできた)
この発言に対し、広告技術企業 Raptive のチーフ戦略責任者ポール・バニスター氏は、Google が「数万人のエンジニアを新たに雇用する」「チップと電力に文字通り1兆ドルを投じる」と表明していることを引き合いに出し、その一方で publisher のコンテンツ除外を可能にするツールすら作れないと主張していることへの疑問を LinkedIn 上で公にした。つまり2026年7月の「遮断を検討する」という発言の前段には、①法廷での対立、②規制当局からの行動要件、③その行動要件を受けて実装されたが「不十分」と見なされたトグル、という積み重ねがあった。
増えている側もいる —— The Guardian と BBC
ここで一律に「Google がすべての publisher を苦しめている」と書くと、それも不正確になる。Newsweek(2026年7月25日付)・PPC.land・DigitalApplied のいずれもが、同じ期間に The Guardian と BBC のトラフィックが増加したと伝えている。
Press Gazette の分析記事(2026年2月5日公開、2026年7月6日更新)は、さらに細かい内訳を示している。全体としてはGoogle検索からのpublisherへの流入が世界全体で約3分の1減少(2025年11月までの1年間)した一方、カテゴリ別では「world news / media」カテゴリは+4%、golf・アウトドア・女性向けライフスタイル系サイトも増加している。逆に落ち込んでいるのは evergreen コンテンツ・スペック情報・アフィリエイト/ベッティング系のセクションだという。
ロンドン大学のジェーン・シンガー教授(ジャーナリズム革新学)は同じ Newsweek 記事の中でこう述べている。
"publishers have long seen Google as both friend and foe—good for traffic, disastrous for ad revenue."
(publisherは長らくGoogleを友でもあり敵でもある存在と見てきた——トラフィックには良いが、広告収益には壊滅的だ)
この「増える側」と「減る側」の分岐が何によって決まっているのかは、後段で扱う「依存度」という軸と関係してくる。
すでに「切る」道具はあった —— SC の AI 除外トグルとその限界
実は Google 自身が、遮断より穏やかな選択肢をすでに用意していた。当ブログはarchives/82「SCのAI除外ボタンを使うべきか」で、2026年6月にベータ版として登場した Search Console の AI Overview 除外トグルを取り上げている。あれから1ヶ月あまりが経ち、このトグルは2026年6月17日から本格的に機能するようになった。
Google は Search Console のヘルプページで「this control is not used as a ranking or inclusion signal」(このコントロールはランキングや掲載の判定材料としては使われない)と明言している。つまり理屈の上では、AI Overviews / AI Mode / Discover の生成AI機能から自分のコンテンツを除外しても、通常の検索順位には影響しないはずだ。
それなら、なぜ USA Today や People Inc. のような大手は、このトグルを押すのではなく「全遮断」を検討するところまで話を進めたのか。答えは「押しても、何が起きたか分からないから」だ。元 Bauer Media の関係者スチュアート・フォレスト氏はこう指摘している。
"without AI-specific click data you cannot judge at all whether AI Overviews bring you traffic"
(AI固有のクリックデータがなければ、AI Overviewsがトラフィックをもたらしているかどうかを判断することは全くできない)
Raptive のポール・バニスター氏はもっと辛辣に、このトグルを「a light switch while the power plant keeps running」(発電所は動かしたまま、明かりのスイッチだけ切るようなもの)と表現した。フォレスト氏はさらに、この状況自体が Google に有利に働く可能性を指摘する——ほとんど誰もこのトグルを使わなければ、Google は「publisher は AI 検索に満足している」という主張の根拠にできてしまう、と。実際には publisher 側にデータがなく、判断できないだけかもしれないのに、だ。
もう一つの遮断: Cloudflare の Content Signals という選択
Google のトグルが「表示面」を制御するのに対し、当ブログがarchives/86・archives/93・archives/96で追ってきた Cloudflare の仕組みは「クローラーそのもの」を制御する、もう一段インフラに近いレイヤーにある。
2026年7月1日、Cloudflare は Content Signals という新しい robots.txt ディレクティブを発表した。Search(検索インデックス用途)・AI Input(AI生成回答への利用)・AI Train(AI学習への利用)の3種類を機械可読な形で個別に許可・拒否できる仕組みで、無料プランを含む全顧客が利用可能になっている。この変更は2026年9月15日に効力を持ち始める。
3つのディレクティブが指す範囲は、それぞれ独立している。
- search —— 検索インデックスを構築するためのクロールを許可するかどうか
- ai-input —— リアルタイムのAI生成回答(例えばAI Overviewsのような機能)にコンテンツを使うことを許可するかどうか
- ai-train —— 将来のAIモデルの学習データとして使うことを許可するかどうか
ここで重要なのは、Google の「同じクローラー問題」とは違い、Cloudflare のインフラ層では検索用クローラーとAI用クローラーを技術的に分離できるという点だ。ただし、これは Cloudflare を利用しているサイトに限られる話であり、Google 自身のクロール・表示ロジックそのものが変わるわけではない——Googlebot が Content Signals の意図を尊重して行動を変えるかどうかは、Google 側の対応次第という留保がつく。当ブログのarchives/91で記録した Verified AI Agent 37体の個別 allow 実装は、まさにこの「検証してから通す」という選択肢を、遮断ではなく実装として選んだ実例だ。
「依存度」という軸 —— なぜ判断が分かれるのか
ここまでの材料を並べると、Google 遮断を検討する側と、当ブログのように allow を推奨する側の分岐点は、単純な「正しい/間違っている」ではなく、検索トラフィックへの経済的依存度の違いにあることが見えてくる。
The Economist の VP ジョシュ・マンク氏は、完全撤退を否定してこう述べている。
"Google is a powerful force to be reckoned with. Traffic can be choppy and declining, but traffic is still traffic."
(Googleは向き合わざるを得ない強大な存在だ。トラフィックが不安定で減少していても、トラフィックはトラフィックだ)
Time の COO マーク・ハワード氏は、さらに一歩進んで「読者」と「ボット」を別の観客として扱う戦略を語っている。
"There are now two audiences...How do we superserve the humans...how do we think about bots as secondary audience?"
(今や2種類の読者がいる。人間をどう最優先で満足させるか、そしてボットを第二の読者としてどう捉えるか)
USA Today や Business Insider のような広告収益依存度の高いニュースメディアにとって、検索トラフィックの減少は事業の存続に直結する。一方 Press Gazette の記事が指摘するように「ad-dependent publishers have far less room to move」(広告依存度の高い publisher には身動きする余地がほとんどない)——皮肉なことに、最もダメージが大きい publisher ほど、遮断のような大きな賭けに出る以外の選択肢が少ない、ということでもある。
ただし、この構図を「publisherが一方的に被害を受けている」とだけ捉えるのも一面的だ。People Inc. のヴォーゲル氏は、2026年6月23日付の報道でこうも語っている。
"Before that, everyone was saying, 'Oh, well, we're good. You don't have to block us because we don't even need you.' And then the minute you block them, your phone rings...Everybody calls, because it turns out everybody needs us. We make so much content at scale...Scarcity is key."
(以前は誰もが『別にブロックしなくていい、あなたたちなんて必要ない』と言っていた。だがブロックした瞬間、電話が鳴る……みんな電話をかけてくる。結局みんな我々を必要としているんだ。我々は大量のコンテンツを作っている……希少性こそが鍵だ)
同氏はさらに、AI企業との契約形態にも「all-you-can-EAT」型(OpenAI・Metaのような包括ライセンス)と、Microsoftのような選択的・従量課金型があると説明しており、遮断の「検討」自体が、交渉材料としての側面を持つことも示唆している。つまり大手 publisher にとって「ブロックする」という言葉は、実行そのものよりも、ライセンス料の再交渉に向けたレバレッジとして機能している可能性がある。
当サイトのような立場——検索経由の広告収益ではなく、WEBディレクター向けの情報提供とツール提供を軸にしているサイト——は、この依存度の構造から見ると、大手ニュースメディアとは全く違う位置に立っている。だからこそ「allow して検証する」という、時間をかけた選択ができる。この違いを無視して「WUSはこう考えるから、大手メディアも同じようにすべきだ」と書くのは、この記事の趣旨に反する。
捏造ではなく、測れないことを測れないと言う
この記事を書きながら気づいたことがもう一つある。フォレスト氏の指摘——「AI固有のクリックデータがなければ判断できない」——は、当ブログがarchives/115・archives/117「同じ条件で測っていなかった」で扱ってきた計測の空白と同じ根を持つ問題だ。
archives/117では、当サイト自身のクローラー実測において「同じ条件で測っていなかった」ことが原因で誤った数字を導いてしまった経緯を記録した。大手メディアが直面しているのは、それよりさらに根本的な問題——Google が AI Overviews 経由のクリックを、検索結果と切り分けて計測させてくれない、という構造上の空白だ。トグルはあっても、押した後に何が変わったかを検証する手段がない。これでは「allow するか block するか」を実測にもとづいて判断すること自体ができない。
当ブログがarchives/119「埋められる穴と、埋めてはいけない穴」で書いたように、埋めるべきでない空白を無理に埋めようとすると、それは捏造になる。今回も同じだ——WSJ の原文数字が読めないまま、確認できない精度で「◯%減少した」と書くことは避けたい。当サイトが確実に言えるのは、「大手メディア複数社が、この1ヶ月で Google 遮断を公然と検討し始めた」という方向性そのものであり、正確な減少率の一致した数字ではない。
自己実証: 当サイトはブロックしていない
当ブログはこれまで一貫して、Google を含む検証済みAIクローラーを個別 allow する立場を取ってきた(archives/85〜archives/91)。ブロックではなく allow を選ぶ以上、その結果を正直に晒す義務があると考えている。
直近の Search Console・GA4 の実測値は以下の通り(いずれも 2026-08-06 に実測)。
Search Console(2026-05-03 〜 08-01・3か月)
- クリック 3 / 表示 2,845 / CTR 0.1% / 平均掲載順位 69.2 位
GA4(同じ3か月・流入経路)
- direct 620 セッション
- referral 505 セッション(うち X = t.co が 71、Facebook 系 250、自社テストサイト 158)
- organic 28 セッション(bing 14 / google 10 / openai 3 / duckduckgo 1)
この3か月で Google 検索から来たのは 10 セッションだった。同じ期間に X(t.co)からは 71 セッション来ている。allow し続けた結果、当サイトに人を連れてきたのは Google ではなく SNS だった、というのが現在地だ。そして Search Console の平均掲載順位 69.2 位は、7ページ目を意味する。表示は 2,845 回あるので「探されてはいる」が、そこまでスクロールする読者はいない。
そして 2026-08-06、allow の代償も数字で出た。前日の 8月5日、GA4 が 954 PV を記録した。だが国別に割ると、日本からは 6 セッション・2 PV しかなかった。残りは Chrome を名乗る自動アクセスで、一意 IP 1,284 個・89か国に分散し、Referer を持たず、平均滞在時間は 0 秒だった。過去30日で見ると、1,348 人のうち日本からの実ユーザーは 87 人(6.5%)である。allow するとは、こういう相手も通すということだ。
この数字が良くても悪くても、当サイトが「allow して検証する」という選択を続ける理由は、依存度の構造が大手ニュースメディアとは異なるからであり、数字が悪化すれば方針そのものを見直す余地があることも、この場で明記しておく。
具体的には、当サイトは robots.txt で Verified AI Agent を個別に allow しつつ(archives/91)、Cloudflare 側では Content Signals の設定を追跡し(archives/93)、Search Console の表示・クリックデータを日次で確認するという運用を続けている。これは「ブロックしない」という消極的な選択ではなく、「通した上で、何が起きているかを見続ける」という能動的な選択のつもりだ。今回のように大手メディアが逆方向に動く週があっても、この運用自体を変える理由には今のところなっていない——ただし、それは当サイトの依存度がまだそこまで大きくないから続けられている選択でもある、という点は正直に書いておく。
WEBディレクターが今週確認すべきこと
大手メディアの動きを対岸の火事として眺めるのではなく、自分のサイトで確認できることを整理する。
- ①robots.txt が誰を通し、誰を止めているかを、思い込みでなく実際に開いて確認する。Google-Extended の有無だけでは AI Overviews への表示可否は決まらない、という構造を踏まえた上で見る。「学習は拒否しているが表示はされている」という状態を、意図せず放置していないかを確認する。
- ②Search Console の AI Overview 除外トグルが自サイトで使えるか確認する。使わない判断をするにしても、「使えることを知らなかった」状態は避ける。使う場合は、押す前と後でトラフィックがどう変わったかを比較できるよう、押す前の数字を必ず記録しておく——フォレスト氏の指摘の通り、AI固有のクリックデータが得られない以上、自分で前後比較するしかない。
- ③Cloudflare を利用しているなら、Content Signals の3分類設定を、2026年9月15日のデフォルト変更前に確認する。search / ai-input / ai-train の3つを個別に見直し、「検索には出したいが学習には使われたくない」といった意思表示ができているかを確認する。詳細はarchives/93を参照。
- ④「AI経由のクリックが見えない」ことを前提に、GA4・SCの計測設計を組む。見えないものを見えるふりで判断しない。見えない部分は「見えない」と明記した上で、見える範囲(SC の表示回数・順位、GA4 のリファラー分類など)で代用する設計にする。
- ⑤自分のサイトの検索トラフィック依存度を数字で把握する。依存度が高いサイトほど、遮断のような大きな決断のコストも大きい。依存度を知らないまま「大手がブロックを検討しているから自分も」と判断しない。
まとめ: 「守る側」の選択肢が増えた週
2026年7月の1週間で明らかになったのは、「Google をブロックするかどうか」という単純な二択ではなく、「ブロックしても実は何も守れない」という構造的な壁と、「ブロックしなくても実は何も測れない」という計測の空白が、同時に存在しているという現実だった。
USA Today の「もう十分だ」という発言も、People Inc. の「Googleは意図的な悪質行為者だ」という主張も、感情としては理解できる。だが同じ週に The Guardian と BBC のトラフィックが増えているという事実は、この問題が「Google 対 publisher 全体」という単純な図式ではなく、依存度・コンテンツの種類・計測手段の有無によって、結果が大きく分かれる複雑な問題であることを示している。
当ブログは今後も、ブロックではなく allow して検証する立場を維持しつつ、その結果を正直に記録していく。
関連archives
- archives/85「守る側の設計思想 — Preferred Sourcesから学んだAIを起こす作法」
- archives/86「Cloudflareのデフォルト『AI bots ブロック』があなたのGEOを殺している」
- archives/91「Verified AI Agent 37体を個別allowした実装ログ」
- archives/93「Cloudflareが『検証』の定義を変えた日」
- archives/96「Cloudflareが『稼ぎ方』を変えた日」
- archives/82「SCのAI除外ボタンを使うべきか」
- archives/81「AI OverviewとAI Modeは別の海」
- archives/115「llms.txt を置いて51日、正直に答え合わせ第2弾」
- archives/117「同じ条件で測っていなかった」
- archives/119「埋められる穴と、埋めてはいけない穴」
一次情報出典
- PPC.land: Reddit and USA Today face Google exit as search traffic drops 28%
- Newsweek: Google Faces Internet Rebellion(2026-07-25)
- DigitalApplied: Publishers Are Weighing Blocking Google. Reddit Might Too.
- TechCrunch: Google is a 'bad actor' says People CEO(2025-09-12)
- Press Gazette: Search isn't dead, it's fragmenting(2026-02-05 / 2026-07-06更新)
- SEO Kreativ: Opt Out of AI Overviews - Without Losing Rankings
- CNBC: Reddit stock sinks on report it may not renew Google AI content deal(2026-07-22)
- Tech Times: Google AI Overviews Opt-Out Hits Search Console
- Forbes: Why Rolling Stone Owner Penske Media Just Declared War On Google(2025-09-14)
- Search Engine Roundtable: Google Says Opting Out Of AI Overviews Is A Huge Engineering Project
- Yahoo Finance(Axios配信): People Inc. CEO accuses Google of abusing its market power(2026-06-23)
WEBサイト