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「2027年に半減」の土台は、7.1%の1点だった ── AI検索の数字から「仮定」を分離する3つの手順

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「2027年に半減」の土台は、7.1%の1点だった ── AI検索の数字から「仮定」を分離する3つの手順
AI検索まわりの数字がいま大量に流通している。だがその多くは実測値ではなく、実測値に仮定を掛けたものだ。「2027年に半減」の土台は一四半期・7.1%減の1点、「AI経由のCVRが高い」はドメイン照合という識別ロジックの産物、「相関0.57」は221タスクという母数から出た値だった。3つの調査を分解し、当サイト自身が同じ日に「未読判定ロジックの検証で差分0件」を早合点しかけた実例も併せて記録する。

「2027年に半減」という数字は、どこまでが実測か

「Google検索からの流入は2027年第3四半期までに半減する」——この見出しが、ここ数日でSEO界隈のあちこちに転載されている。出どころは英国の出版社団体Association of Online Publishers(AOP)が公表した分析で、コンサルティング会社DJB Strategiesが手掛けたものだ。日本語圏ではWeb担当者Forum(鈴木謙一氏)が2026年7月31日に紹介している。この手の「半減」という強い言葉は拡散力が高く、記事タイトルだけを見て「Google検索経由の集客はもう詰んだ」という空気が広がりやすい。

ただ、見出しをそのまま持ち帰る前に、一つだけ確認したいことがある。この調査が実際に測ったのは何で、どこから先が計算による推測なのか、という線引きだ。実測値と推測値は、同じ「数字」という形をしているだけに、混ざった瞬間に区別がつかなくなる。当サイトも毎日、AI検索やSEOに関する一次情報を扱っている以上、この線引きを自分の記事でも曖昧にしてはいけないと思っている。

今日の記事は、話題になっている数字を一つずつ分解しながら、当サイト自身が今日直面した「測ったつもりが測れていなかった」実例も併せて置いていく。数字を作る側の話と、数字を受け取る側の話、その両方を同じ記事の中で扱うことで、線引きの練習台にしたい。

断っておくと、この記事は「AIの影響を過小評価すべきだ」という話をしたいわけではない。検索という行為の中身がAIによって変わりつつあること自体は、当サイトがこれまでの記事で繰り返し扱ってきた通り、実際に起きている変化だと考えている。今日取り上げたいのは、その変化の大きさを表す数字が、正しい単位で報告されているかどうかという、もう一段手前の話だ。

数字の出どころを分解する作業は地味で、見出しの強さに比べると迫力に欠ける。だが、WEBディレクターが自分の現場でどこまで警戒し、どこにリソースを割くべきかを判断するときに頼りにするのは、結局のところこの地味な分解作業の積み重ねでしかない。

なお、この作業を続けていく中で、当サイト自身の数字の扱いも例外ではいられないということが、今日はっきりした。他社の調査を分解する記事の後半に、当サイト自身の失敗を置くのは体裁がいいものではないが、都合の悪い実例を隠して「数字は正しく読もう」と説くのでは、この記事自体が今日指摘している問題をそのまま体現してしまう。だからそのまま書く。

AOP調査の中身 — 「半減」の土台になっている実測は、7.1%の1点

AOPの調査対象は、英国の主要出版社8社。参加社の総ページビューの約80%にあたる108億ページビューを分析している(長いテールのURLを除外した上での約80%という条件が付いている)。調査期間は6ヶ月。そのうち2025年第1四半期から第2四半期にかけての一四半期の変化が、この7.1%だ。この調査は複数の実測値を公表しているが、そのうち「2027年第3四半期までに半減する」という結論の土台になっているのは、次の1点である

  • Google経由のオーガニック検索参照数が、四半期比で7.1%減少した

「2027年第3四半期までに半減する」という結論は、この一四半期分の減少率がこの先も同じペースで続くと仮定した場合の外挿であって、2025年第3四半期以降の実測データに基づくものではない。まだ来ていない未来の数字を、過去に一度だけ観測した変化率を使って前もって計算している、という構造だ。

なお、この調査が公表している実測値はこの1点だけではない。セグメント別・トピック別に十数点の数字が出ており、後述するコンテンツ種類別の内訳もその一部である。ここで確認したいのは「調査が1つしか測っていない」ということではなく、「半減」という見出しになった結論が、そのうちの1点だけを土台にしているということだ。この2つは似ているが別のことなので、区別しておきたい。

AOP調査の実測値である2025年第2四半期のマイナス7.1%を起点に、2027年第3四半期のマイナス50%まで破線で伸ばした折れ線グラフ。実測区間は2025年第1四半期から第2四半期までの1区間のみで、それ以降はすべて外挿区間。
「半減」という結論の土台になっているのは、2025年第2四半期の7.1%減という1点。そこから先は「この傾向が続くなら」という仮定を掛けた計算値である。なお調査自体は、この1点以外にもセグメント別・トピック別の実測値を公表している。

母数の大きさは、結論の確からしさを保証しない

108億ページビューという母数は、確かに大きい。8社という参加社数を考えれば、一社あたりの平均は13.5億ページビューに達する規模で、決して小規模なサンプルではない。ただし、母数の大きさが保証しているのは「一四半期の実測値7.1%という数字そのものの精度」であって、「その先2年間の推移」の精度ではない。母数がどれだけ大きくても、外挿という手続きを一段挟んだ瞬間に、確からしさの水準は変わる。この二つを同じ重みで扱ってしまうと、大きな母数への信頼がそのまま将来予測への信頼にすり替わってしまう。

もう一点、「オーガニック検索参照数」という指標自体の性質にも触れておきたい。この指標は、あくまで検索結果ページから出版社サイトへ実際に遷移したセッションの数を数えたものであり、検索結果ページ上でAI Overviewsのような回答面に自社コンテンツが引用されているかどうかは、この数字には直接反映されない。つまり「参照数が7.1%減った」という事実は、検索結果ページの中で何が起きているかまでは説明していない。クリックされなかった側の内訳——そもそも表示されなかったのか、表示されたが回答面で完結してクリックされなかったのか——は、この一つの数字からは切り分けられない。

同じ期間、Googleは検索事業で12%成長している

もう一つ、AOPの発表と同時期に押さえておくべき事実がある。同じ時期にGoogleは自社の検索事業収益について+12%の成長を報告していた。出版社側の参照トラフィックが四半期で7.1%落ちている一方、検索という事業全体はむしろ拡大している。この二つの数字は矛盾しているわけではない——検索結果ページの中でAI Overviewsのようなゼロクリック的な回答面が増えれば、ユーザーは検索エンジン上に長く留まり、外部サイトへのクリックだけが相対的に減る、という構図は十分に成立する。だが「流入が減っている」という一言だけを切り出すと、検索という行為そのものが縮小しているかのような誤読を招きやすい。実際には、検索という行為の総量はむしろ増え、その中身の分配が変わっている、という方が実態に近いのかもしれない。

外挿が悪いのではない。外挿だと書いていないことが問題になる

ここで強調しておきたいのは、外挿という手法そのものが誤りだという話ではない、ということだ。一四半期の変化率から将来を推定するのは、限られたデータで見通しを立てるときの一般的なやり方であり、それ自体は分析としてまっとうな作業である。データが少ない段階で「わからない」とだけ言って立ち止まるより、仮定を明示した上で見通しを立てるほうが、意思決定にはよほど役立つ。

問題は、記事の見出しや要約が並んだときに「半減する」という結論だけが独り歩きし、その結論が「実測された1点のデータに、変化なし・条件不変という仮定を掛けて2年先まで伸ばした数字」だという前提が省略されてしまうことだ。読む側からすれば、見出しだけを見た瞬間に「もう半減という現象が確認された」かのように受け取ってしまう。だが実際に確認されているのは、あくまで一四半期分の7.1%という一点だけである。

「続くと仮定すれば」が省略されると起きること

外挿には必ず「この傾向が今後も続くとすれば」という条件がついている。ところがこの条件節は、見出しやSNSでの拡散の過程で真っ先に削られる部分でもある。「〜と仮定すれば半減する可能性がある」という一文が、伝言ゲームの中で「半減する」という断定に変わっていく。これは調査元の責任というより、情報が伝播していく過程で起きる自然な劣化に近い。だからこそ、数字を受け取る側が、条件節が抜け落ちていないかを自分で確認する習慣を持つ必要がある。

この区別は、WEBディレクターが社内やクライアントに数字を報告するときにこそ効いてくる。「実測7.1%減」と「その傾向が続くと仮定した場合の2027年予測」は、意思決定の重みがまったく違う。前者は今起きている事実であり、対策の緊急度を測る材料になる。後者は前提を置いた上での仮説であり、複数のシナリオのうちの一つとして扱うべきものだ。この二つを同じトーンで報告すると、読み手は前者の確からしさで後者を信じてしまう。

実務的には、報告の中で「実測されているのはここまで」「ここから先は前提つきの推測」という境界線を、文章の途中に一行差し込むだけで十分効果がある。境界線を引く作業そのものは数分で終わるが、その一行があるかないかで、読み手が抱く危機感の質はまったく違ったものになる。境界線がない報告は、読み手に「すべてが確定した事実」として伝わってしまい、境界線がある報告は、読み手に「ここまでは事実、ここから先は自分たちで判断する余地がある仮説」として伝わる。後者のほうが、結果として冷静な意思決定につながりやすい。

「AI経由のCVR」— その「AI経由」は誰がどう判定したのか

同じ日に流通しているもう一つの数字が、米国のOrbit Media Studios(共同創業者・CMOのAndy Crestodina氏)による調査だ。対象は97のB2B・リード獲得系サイト、直近1年間(2026年6月まで)の約2,890万セッション。この調査が示した数字はこうだ。

  • ChatGPT経由のセッションのコンバージョン率: 2.1%
  • Google検索経由のセッションのコンバージョン率: 0.5%
  • 対象サイトの約3分の2で、個別にも同様の傾向が確認された

ただし、この数字を読む前に確認しておきたいことがある。調査対象の約2,890万セッションのうち、AI経由と識別されたのはわずか14万セッション——全トラフィックに占める割合はわずか0.5%、200人に1人にとどまる。Orbit Media自身、この事実に専用の見出し「High Conversion rates, but very low traffic(コンバージョン率は高いが、トラフィックはごく僅か)」を立てて念を押している。同じ調査の中で、Google検索はAI経由の約100倍のトラフィックを送っているとも報告されている(原文ではこの数字の直前の見出しがChatGPTとGoogle検索の比較を扱っており、この「約100倍」がAI経由の合計を指すのか、ChatGPT単体を指すのかは、原文の該当箇所からは一意に読み取れない)。調査元自身はこれを根拠に「オーガニック検索は依然としてリード獲得においてより強力な情報源である」と結論づけている。
ここで一つ、混同しやすい点がある。上の一文に出てきた「0.5%」と、上の箇条書きにある「Google検索経由のコンバージョン率0.5%」は、たまたま同じ数字になっているだけで、指しているものが違う。前者はAI経由トラフィックが全体に占める割合であり、後者はGoogle検索経由セッションのコンバージョンだ。測っている対象がまったく別であることを、先に断っておく。
正直に書いておくと、この記事の最初の下書きには、この絶対量の話が入っていなかった。ChatGPTとGoogle検索のコンバージョン率の対比、3倍・4.2倍・7倍という強い倍率の数字に気を取られ、「そもそもAI経由のトラフィックは全体の0.5%しかない」という、調査元がわざわざ専用の見出しまで立てて強調していた但し書きを、最初は運び忘れていた。

ここで一つ、細かいが重要なことがある。単純に割り算すれば2.1%÷0.5%で約4.2倍になる。ところがこの調査自体は、AI経由の訪問者は他の自然検索経由と比べ「約3倍」の確率でリード転換すると報告している。同じ調査の中に、2つの数字が併存している。

どちらかが誤りなのではない。比べている範囲が違う。「約3倍」はAI経由の流入全体他の自然検索流入全体を比べた値であり、「2.1%対0.5%」はそのうちChatGPT単体Google検索単体を取り出した値だ。どちらも97サイトの集計値であって、片方が例示というわけではない。範囲が違うだけで、調査の中ではどちらも正しい。だがこの2つが外部の記事や社内資料に引用されるとき、その区別まで一緒に運ばれることは少ない。「AI経由のCVRは3倍」と書かれることもあれば「4倍」と書かれることもあり、読む側には自分がどちらの数字を見ているのかが分からない。

さらに言えば、この調査には3つ目の数字もある。全サイトのデータをまとめて集計するのではなくサイトごとの中央値で見ると、AI経由の訪問者のコンバージョン率は7倍高いと報告されている。もう一つ、コンバージョンの種類で絞り込んだ数字もある。Orbit Media自身、コンバージョンには漏斗(ファネル)の中で価値の違うものが混ざっているとして、問い合わせフォーム送信・デモ依頼・商談設定・電話クリックといった高意図のコンバージョンと、ニュースレター購読・資料ダウンロード・ウェビナー登録といった低意図のコンバージョンを分けて分析すべきだと述べている。実際にコンバージョンの種類別に分解しても同じ傾向は再現しており、低意図のコンバージョンに絞ると、AI経由の訪問者は他の流入経路と比べて2倍の確率でニュースレター購読・資料ダウンロード・ウェビナー登録に至ると報告されている。
つまり違いを生んでいる軸は3本ある——①比べる範囲(AI経由全体か、ChatGPT単体か)、②集計の仕方(全データをまとめるか、サイトごとの中央値を取るか)、そしてコンバージョンの種類(高意図か、低意図か)だ。このうち3倍・7倍・2倍は調査が公表した値であり、約4.2倍だけは本稿が割り算によって導いた値である。値の性質は違うが、どれも同じ調査から出てきており、どれも間違っていない。

本稿を書く過程で、この取り違えが実際に起きた

正直に書いておく。この記事の下書き段階で、この箇所は「約4倍」に統一されていた。実測値から計算すれば確かに約4.2倍であり、計算としては何も間違っていない。しかしそれでは、調査自体が報告している「約3倍」という数字が記事から消えてしまう。読者は「Orbit Mediaの調査は4倍と言っている」と受け取ることになるが、調査はそう言っていない。

数字を一つに揃えようとした瞬間に、元の報告が消えかけた。しかもその統一は、より正確にしようという動機から出ている。整合させる作業そのものが、出典との距離を広げることがあるということだ。本稿のテーマがまさにこれなので、修正した経緯ごと残しておく。

この差が驚くべきものであることは変わらない。97サイトという母数と、約3分の2のサイトで個別にも同じ方向の傾向が出ているという事実は、単発の異常値ではなく、ある程度一般化できる現象である可能性を示している。ただ、この数字を持ち帰る前にもう一つ確認したいことがある。「AI経由」というラベルを、この調査はどうやって付けているのか、という点だ。

なぜAI経由のコンバージョン率がこれほど高くなるのか、という点について、Orbit Media自身は専用の見出し(「Why are visitors from AI more likely to become leads?」)を立てたうえで、4つの仮説を番号付きで挙げている。①AIがすでに比較・絞り込み(ショートリスティング)を済ませている——ChatGPTから来る時点で会話の中で推薦を受け、比較し、絞り込みまで終えており、検討の大部分はモデルの中で起きていたのではないか、②利用者はすでにそのブランドを知っており、AIはそこへ辿り着く案内役を果たしただけではないか(ナビゲーション目的の訪問)、③AIの回答は広告ではなく助言のように受け取られるのではないか、④AIを使う利用者はもともと目的意識が高いのではないか、の4点だ。ただし調査自身がこれらを「hypotheses(仮説)」と呼び、末尾でも「単なる逸話の集積はデータではない。だから証拠を探しに行った」としたうえで「データが裏付けることと、裏付けないこと」を分けて示している。因果関係として検証済みの結論ではない。
ここは正直に書いておきたい。筆者は当初この段落に、自分なりの見立てとして「AIアシスタントに質問を投げる利用者は、検索エンジンに単語を打ち込む利用者よりも、すでに検討がある程度進んだ状態で、具体的な意思決定に近い質問を投げている可能性がある。検索結果を何ページも見比べる代わりに、AIに一段階整理させてからサイトを訪れているとすれば、その時点での訪問意欲や検討度合いが高いのは自然なことだ」と書いた。しかしこれは、Orbit Media自身が挙げている仮説①とほぼ同じ内容だった。「調査は理由を説明していない」のではなく、調査がすでに挙げている仮説を、自分の推測として提示していたことになる。いずれにせよ、これらは調査自身が「仮説」と位置づけているものであり、検証済みの因果関係ではない。

「AI経由」の識別は、パターンマッチングの産物

調査の方法として明かされているのは、各セッションのソース/メディアを、ChatGPT・Perplexity・Gemini・Claude・Copilotといった代表的なAIアシスタントのドメインリストと突き合わせ、加えてGA4が新設した「AI Assistant」というメディア区分ともパターンマッチングして識別する、というものだ。ここで一点、期間との噛み合わせを確認しておきたい。GA4の「AI Assistant」という区分が使えるようになったのは2026年5月中旬であり、この調査の対象期間12ヶ月のうち、この区分がカバーしているのは最後の約1.5ヶ月だけである。つまり識別に使った手がかりの1つは、期間の大半で存在していない。
ただし、この限定は識別手段全体にはかからない。Orbit Media自身の説明によれば、ドメインリストとのパターンマッチング(source-and-medium方式)は12ヶ月の調査期間全体に均一に適用されておりGA4の「AI Assistant」グルーピングが取りこぼす参照元も、このパターンマッチングの側で拾っているという。つまり「AI Assistant」区分がカバーするのは直近1.5ヶ月だけだが、それは補助的な照合手段であって、識別の土台となっているドメインリスト方式そのものは12ヶ月間ずっと機能していたことになる。
いずれにせよ「AI経由かどうか」は、あらかじめ用意されたドメインリストと文字列パターンに一致するかどうかで決まる分類であって、外部の第三者機関がその定義を検証して確立したものではない。

これは調査の価値を否定する話ではない。むしろ、AI検索エンジンからの流入をトラッキングツール側がどう識別しているかという技術的な仕組みそのものが、まだ発展途上であることの証拠として読むべきだ。リストに載っていないAIサービス、リストの更新が追いついていない新興サービス、リファラー情報が欠落するケースなどは、この分類の外側に取りこぼされている可能性がある。当サイトが以前の記事で、Search Consoleの新機能「SNS投稿もGoogle検索に測れる日 ── Search Console『Platform Properties』、ドメインなしで検証できる初のプロパティ」を取り上げたのも、こうした「何を測っているか」の土台自体が今まさに作られている最中だからだ。

「取りこぼされている側」は数字に出てこない

ここで見落とされがちな点についても、実は調査元自身が言及している。Orbit Mediaは「実際のAI経由トラフィックはこの数字よりも高い可能性が高い」と述べたうえで、理由を2つ挙げている。①GoogleのAI ModeやAI Overviews経由の流入は、GA4上では「Organic Search(オーガニック検索)」に分類されてしまい、AI経由だと識別できないこと②AIアプリ経由の流入は参照元情報を持たないため、GA4上では「Direct(ダイレクト)」に分類されてしまうことの2点だ。つまり、単にリストに載っていないAIサービス経由のセッションが漏れるだけでなく、Google自身のAI機能とAIアプリという主要な2つの経路が、識別ロジックの外側に置かれている。
ここから先は当サイトの見立てになるが、取りこぼされた分がどちらの方向に偏っているかまでは、この調査からは判断できない。実際のAI経由コンバージョン率は、この調査が示した2.1%よりもさらに高い可能性もあれば、逆に何らかのノイズが混入して低く出ている可能性もある。数字の外側に「見えていない分」が存在するという事実だけを、まず認識しておく必要がある。

この構造は、当サイトが自分のアクセスログを見るときにも同じ形で現れる。UAやリファラーのパターンでボットやクローラーを分類する作業は、事前に用意したリストとの突き合わせという意味で、Orbit Mediaの「AI経由」判定とまったく同じ性質を持つ。リストにないクローラーは「その他」に流れ込み、実際には特定のAIサービスの巡回であっても、集計上は識別されないまま埋もれる。分類ロジックを持つツールを扱うときは、常に「このリストの外側には何があるか」を一緒に考える必要がある。

コンバージョン」も、分類の産物だ

ここまでは「AI経由かどうか」という、流入元の分類の話をしてきた。だが同じ調査の中には、もう一つ別の分類作業がある。「コンバージョン」そのものをどう定義するか、という分類だ。Orbit Media自身の説明によれば、キーイベント(key event)は一件ずつ手作業で分類されている。CTAクリック・問い合わせページの閲覧・スクロール・動画視聴といった行動は、コンバージョンとしてはカウントされていない。そして調査元は自らのMethodology(調査手法)の中で、「この階層分け(tiering)が、この分析の中でいちばん判断に依存する工程だ(This tiering is the most judgment-dependent step in the analysis)」と明記している。

つまり、記事の冒頭で紹介した2.1%・0.5%・3倍・7倍・2倍といった数字は、すべてこの手作業による分類の上に成り立っている。流入元の分類(AI経由かどうか)と同じように、コンバージョン側の分類(何をコンバージョンとして数えるか)にも、調査者の判断が介在している。どちらか一方だけを確認して「分類ロジックを確認した」と済ませてしまうと、もう半分は見落としたままになる。

コンテンツ種類で真逆に振れる — マイナス54%とプラス63%が同じ調査に同居している

AOP調査に話を戻す。108億ページビューという大きな母数から算出された「7.1%減」という全体平均値は、実はコンテンツの種類によってまったく違う顔を見せている。同じ調査の中でコンテンツ種類別の内訳を見ると、次のような数字が出ている。

  • ガイド・ハウツー系コンテンツ: 20%を超える減少(原文は「20%を上回った」であり、正確な値は示されていない)
  • ニュースインタビュー系コンテンツ: +63%
  • 食品・飲料のハウツー系コンテンツ: -54%
  • 健康・ウェルネス系の分析コンテンツ: +46%
  • 金融・ビジネス系のハウツーコンテンツ: -52%

なお、この5つは同じ切り口から取られたものではない。ガイド・ハウツー系はコンテンツの形式のみによる分類だが、残りの4つ(ニュースインタビュー系・食品飲料ハウツー系・健康ウェルネス系分析コンテンツ・金融ビジネス系ハウツーコンテンツ)は、コンテンツ形式とトピック(主題)を掛け合わせたクロス集計の値であり、単純なトピック分類ではない。この点は誤解しやすいので明記しておく——例えば健康・ウェルネスというトピック単体(形式を問わない全コンテンツ)の変化率は+7%であり、先の+46%という数字は「健康・ウェルネス×分析コンテンツ」という掛け合わせに限定した値だ。同様に金融・ビジネスというトピック単体の変化率は-23%であり、-52%は「金融・ビジネス×ハウツー」という掛け合わせに限定した値である。トピック単体で見るか、形式とのクロスで見るかによって、数字はここまで変わる。
その上で見ると、全体では減少しているのに、ニュースインタビュー系(news×interviews)だけを見ればプラス63%という大幅増になっている。同じ調査、同じ期間、同じ8社の中に、マイナス54%とプラス63%が同居している。これは「Google検索流入は減っている」という一言の要約が、実態のかなり大きな部分を覆い隠してしまうことを示す、わかりやすい例だ。

AOP調査における Google 検索参照数の変化率を、6本の横棒で比較した図。上から、全体平均(全体)マイナス7.1%、ガイド・ハウツー系(純形式)マイナス20%超、ニュース×インタビュー(クロス集計)プラス63%、健康・ウェルネス×分析(クロス集計)プラス46%、金融・ビジネス×ハウツー(クロス集計)マイナス52%、食品・飲料×ハウツー(クロス集計)マイナス54%。各行に「純形式」「クロス集計」の軸ラベルを付し、両者が別の軸であることを示している。脚注に、純トピックだけで見ると健康・ウェルネスはプラス7%、金融・ビジネスはマイナス23%であり、クロス集計の数字とは別物であることを明記。
同じ調査・同じ期間の中で、マイナス54%からプラス63%まで振れている。全体の7.1%減はすべての参加社を集計した値であって、この内訳の平均ではない。

なぜコンテンツの種類でここまで差が出るのか

AOPの発表は、この差が生じる理由についても触れている。ガイド・ハウツー系の減少については、「ユーザーがAIの回答の速さと手軽さを、編集的な専門性より優先しやすいためだと考えられる」という趣旨の説明があり、ニュースインタビュー系が増加を保った理由についても、「収集・要約されやすい定常的なコンテンツに比べ、AI Overviews内でニュース分野には厳格なガードレール(掲載制限)が敷かれているためだと考えられる」という趣旨の説明が付いている。いずれも原文では「likely」(〜と考えられる)という留保付きの表現であり、確定した因果関係として断定されているわけではない。この留保を踏まえたうえで、これまでのAI Overviewsまわりの一般的な観察と重ねると、次のように腑に落ちる部分はある。「〜のやり方」「〜の作り方」のようなハウツー系コンテンツは、AIが回答面の中で手順そのものを要約・生成しやすく、ユーザーが元記事までクリックする必然性が薄れやすい。一方、ニュースインタビューのような一次性・速報性の高いコンテンツは、AIが要約するにしても「誰が何を語ったか」という固有の情報源としての価値が残りやすく、元記事へのクリックが維持されやすい。ただし、これはAOP自身も「likely」と留保をつけている仮説であり、確定した因果関係ではない点は改めて明記しておく。

WEBディレクターの立場から見れば、この内訳のほうが全体平均よりよほど実務的な意味を持つ。自分のサイトのコンテンツがハウツー系に近いのか、ニュース性の高い一次情報に近いのかによって、Google検索からの流入減少の当たり方はまったく違う。平均値だけを見て「うちも半減するかもしれない」と考えるのは、少なくともこの調査の中身からは導けない。

実務上のヒントとしては、まず自社の主要コンテンツを、この5つの実例(ガイド・ハウツー系/ニュースインタビュー系/食品・飲料のハウツー系/健康・ウェルネス系の分析コンテンツ/金融・ビジネス系のハウツー系)のどれに近いかで大まかに仕分けし、コンテンツ種類ごとに検索流入の推移を分けて追いかけることが挙げられる。全体平均という一つの数字で管理してしまうと、伸びているカテゴリの成果が減っているカテゴリの数字に打ち消され、どちらの対策も後手に回るリスクがある。

Profoundの0.57 — 平均値が、カテゴリごとのマイナス0.98からプラス0.97を覆い隠す

もう一つ、平均値が実態を覆い隠す例を挙げる。AI検索の可視性を計測するProfound社は、AIの回答内でブランドが言及されること(原文が明示する定義は「share of voice」——ブランドが回答全体を通じてどれだけの頻度で言及されるかを指し、特定のセクション内での掲載順位を指すものではない、と調査元自身が断り書きを置いている)と、そのブランドが実際に選択される(原文の定義は「Chosen (1st or 2nd pick)」——参加者がタスクの中でそのブランドを1位または2位に挙げたこと。クリックやコンバージョンのことではない)ことの相関係数を0.57と報告している。なお、このタスク自体、参加者に「2つ選べ(pick two)」という形式を課しており、これが参加者を最終的な選択へと後押しした可能性がある点、そしてサンプル規模が小さい点を、調査元自身が調査の限界として述べている。

ここで本稿の手順どおり、まず母数を確認しておく。この調査は56人の参加者がChatGPTを用いて行った224件のタスクのうち、分析対象となった221件を、Profound社が保有するブランド引用データと照合したものだ。AOP調査の108億ページビューや、Orbit Mediaの2,890万セッションと比べると、桁が3つも4つも違う。母数が小さいこと自体は調査の欠陥ではない——実際の利用者に実際のタスクを行わせる形式の調査では、この規模が現実的だろう。ただし、この規模を頭に置いた上で以下の数字を読む必要がある。

0.57という数字だけを見れば、「言及されることは、選ばれることとそれなりに関係がある」という、まずまず妥当な結論に見える。相関係数は通常マイナス1からプラス1の範囲を取り、0.57はその中間よりやや強めの正の相関にあたる。ところが、この相関係数をカテゴリ別に分解すると、様相はまったく違ってくる。ペット保険のようなカテゴリでは相関係数が0.87と強い正の相関を示す一方、コーチングのようなカテゴリではマイナス0.98という、ほぼ完全な負の相関が観測されている。

「言及されるほど選ばれなくなる」ように見えるカテゴリがある — ただし調査自身が但し書きを付けている

マイナス0.98という数字は、単に相関が弱いという話ではない。ほぼ完全な逆相関——つまり、AIの回答内で言及される回数が増えるほど、実際に選ばれる割合はむしろ下がる、という関係が、コーチングというカテゴリでは観測されている。

ただし、ここには調査自身が付けた但し書きがある。Profoundは、コーチングやフィットネスアプリなど一部のカテゴリについて、各カテゴリに含まれるブランド数が少ないため、逆相関は「おそらくノイズだろう」と述べている。つまりマイナス0.98は、「言及されるほど選ばれなくなる」という現象が実在する証拠ではなく、母数が足りないことによって生じた見かけ上の数字である可能性が高い、と調査元自身が言っているわけだ。

この但し書きは、実は本稿のテーマそのものの、いちばん良い実例だと思う。マイナス0.98という数字は強く、印象に残る。しかし調査元が自分でノイズの可能性を認めている数字を、その但し書きごと運ばずに「逆相関が起きているカテゴリがある」とだけ伝えると、読んだ側は実在の現象として受け取る。強い数字ほど、但し書きは伝言の過程で先に落ちる。

ここで一つ、自分に対して確認しておきたいことがある。この2つのカテゴリの値を単純に平均しても、0.57にはならない。実際に計算すれば(0.87 + (-0.98)) ÷ 2 = -0.055であり、符号すら逆になる。全体の0.57という値は、この2カテゴリだけを平均したものではなく、調査対象となった多数のカテゴリを集計した結果である。

この点については、Profound社が公表しているAppendix A(付録A)に、カテゴリごとの内訳がブランド数・Picks数(選ばれた回数)・相関係数・信頼性区分(solid/fair/thin)付きで、すでに載っている。筆者はこの記事を書く過程で、いったん「カテゴリ別の相関がどの母数に基づくか判別できない」と書いた。原文の付録を最後まで読んでいなかったからだ。問題は、その公表されているデータをどう読むかだ。

カテゴリブランド数Picks相関信頼性
Pet insurance10540.87solid
Meal delivery10340.13solid
Budgeting7450.76fair
Nutrition apps7250.57fair
Travel insurance6190.26fair
Coaching616-0.98fair
Grocery5170.97fair
Fitness apps512-0.44fair
Gym & equipment5150.53fair
Gas savings3150.50thin
Fitness trackers370.00thin
Supplements3150.87thin

相関係数の範囲について、Profound自身のMethodology説明は「0からプラス1」(0.5が明確な関連ありの目安)としている。ところが、すぐ上の表(Appendix A)を見ればわかる通り、同じ調査がcoachingでマイナス0.98、fitness appsでマイナス0.44という負の値を実際に公表している。統計上、相関係数は本来マイナス1からプラス1の範囲を取るものであり、この記事でもその表記に統一する。「0から1」という自社の説明文と、自社が公表した数字そのものが食い違っている——調査元の言葉をそのまま運ぶ前に、その調査元が公表した生データと突き合わせる必要があることを示す一例だ。またブランド数が5未満のカテゴリ(thin区分)については「方向性の参考程度」と注記されており、この幅だけで数字の強さを断定的に読むべきではない。

ここで注目したいのがMeal delivery(食事宅配)のカテゴリだ。ブランド数10・Picks数34という、Profound自身が「solid(十分な信頼性)」と分類する規模を持ちながら、相関係数は0.13まで落ちている。「母数が足りないから振れている」という言い訳が通用しない、十分な母数を持つカテゴリでさえ、0.57という平均値から大きく外れる例がここにある。0.57という平均は、母数の多寡にかかわらず、この幅の振れを内側に隠している。coachingのマイナス0.98はfair区分であり、ノイズの可能性を調査元自身が指摘しているが、solid区分のmeal deliveryの0.13は、その指摘の対象外だ。つまり確認すべきことは2つある——自分が扱っているカテゴリがこの表のどこに位置するかと、その位置の数字がsolid・fair・thinのどの信頼性区分に属するかだ。この2つを確認せずに平均値0.57だけを施策の根拠にすると、母数が十分な領域でさえ大きく外れているカテゴリの存在を見落とすことになる。

さらにProfoundの調査では、全タスクの92.8%が、外部ウェブへの「意味のあるクリック」なしで終わったと報告されている。ここも単位を確認しておきたい。母数は「セッション」ではなく219件のタスク(N/A=評価対象外を除いた「評価可能な母数」であり、相関係数0.57の算出に使われた221件の「コード化可能なタスク」とは別の数字)であり、また「クリックが一切なかった」ではなく「意味のあるクリックがなかった」である。Table 4では反応の内訳が4区分(92.8%・48.9%・38.8%・3.2%)で公表されているが、「何をもって『意味のある』とするか」という判定基準そのものは明文化されていない。ブランドが言及されても、その先の行動がクリックという形で観測できないケースが大多数を占めているという事実は、AI検索まわりの数字を扱うときに常に付きまとう「見えている一割弱の外側で何が起きているかわからない」という構造的な限界を、そのまま裏付けている。相関係数の計算自体も、この92.8%という「クリックしない層」をどう扱うかによって結果が変わり得ることは、念頭に置いておいたほうがいい。

この数字は、WEBディレクターにとって少し不安になる話でもある。92.8%という比率が示しているのは、AIの回答面で自社ブランドがどう扱われているかを知る手段が、現状ではきわめて限られているということだ。ここも算術で「残り7.2%」と丸めず、調査が公表している実数を確認しておきたい。Profoundによれば、3.2%は外部サイトでの主張を確認した(verified a claim on an outside site)という形でのクリックだった。人数ベースで見ると、参加者56人のうち8人は調査期間を通じて外部クリックをし、9人は2〜3回クリックしたという。合わせても17人にとどまり、残る大多数の参加者は調査期間を通じて一度も外部クリックをしていない。クリックというシグナルが手に入るのはごく一部の参加者・一部のタスクに限られており、その一部だけを見て「AI経由の評価」を語ることは、母集団のほとんどを見落としたまま全体を語ることに近い。カテゴリ別の相関係数がここまで振れているのも、この見えない92.8%の中に、カテゴリごとに異なる何かが起きている可能性を示唆している。

【自己実証】当サイトで今日起きたこと — 同じ対象を3回測って3通り出た

ここまで他社の調査を分解してきたが、では当サイト自身は数字を正しく扱えているのか。今日、記事を準備している最中に、まさにその点で自分自身がつまずいた出来事があったので、正直に記録しておく。よそのデータの穴を指摘する記事が、自分のデータの穴には気づかないまま公開される、というのはよくある話だ。今日はそれを避けたい。

サイトでは、サイトの健全性を毎日自動でチェックし、担当者ごとにレポートを出力する仕組みを運用している。今日、そのレポート出力先が正しく動いているかどうかを確認しようとした。結果は、確認するたびに違う答えが返ってきた。同じ対象を、同じ日に、同じ担当者が測っているにもかかわらず、である。

  • 1回目: 出力先のパスを1文字違いで指定してしまい、その結果生じたエラーを表示させない設定にしていたため、「出力先が空である」という結果になった
  • 2回目: 正しいパスで確認したが、出力の先頭部分だけを見て判断したため、「数日前で更新が止まっている」と読んでしまった
  • 3回目: 出力の末尾と件数の両方を確認したところ、今日まで正常に稼働しており、運用開始日から件数も完全に一致していることがわかった

結論から言えば、この仕組みは最初からずっと正常に動いていた。3回のうち2回、実際とは違う結果を出してしまったのは、対象そのものの問題ではなく、確認の仕方の違いによるものだった。1回目はパスの誤りに気づかないままエラーを握りつぶしていたこと、2回目は全体ではなく先頭だけを見て判断したことが原因だ。危うく「更新が止まっている」という誤った状態を、そのまま社内向けの報告として書きかけていた。

「測れなかった」ではなく「測り方が違った」

この経験から得た教訓は単純だが、実務では意外と忘れられる。「対象が正常かどうか」を確認する作業と、「自分の確認方法が正しいかどうか」を確認する作業は、別の作業だということだ。今日の1回目・2回目は、前者だけを確認したつもりで、実際には後者を確認できていなかった。3回目になって初めて、両方を確認できた。もし2回目の結果で報告を止めていたら、実際には正常に動いている仕組みを「壊れている」と社内に伝えてしまうところだった。数字が食い違ったときに「対象が悪いのか、測り方が悪いのか」を切り分ける手間を惜しまないことの重要性を、今日改めて実感した。

振り返ってみると、1回目と2回目の間には共通点がある。どちらも「都合の悪い情報を、見ないで済む形にしてしまっていた」という点だ。1回目はエラーそのものを表示させない設定にしていたことで、異常があったこと自体に気づけない構造になっていた。2回目は出力の全体ではなく先頭だけを見たことで、直近の正常な更新分がそもそも視界に入らない状態になっていた。どちらも、意図的に不都合を隠したわけではないが、結果として不都合が見えない設計・見え方になっていた。数字を測る仕組みそのものが「都合の悪い部分を見せない構造」になっていないか、というのは、AI検索まわりの調査を読むときにも当てはまる視点だと思う。

【自己実証】「差分0件」は正しさの証明ではなかった

もう一つ、同じ日に起きたことを書く。当サイトの仕組みの中に、届いたメッセージを「既読」か「未読」かを自動で判定する機能がある。この判定ロジックに不具合が見つかったため、修正版と修正前の旧版を、実際に届いた11件のメッセージで突き合わせてみた。結果は「差分0件」——2つのバージョンが出した判定はすべて一致した。

この時点で「今回の修正は既存の挙動に影響を与えていない」と結論づけて先に進みかけた。だが、念のため、実際のメッセージではなく、判定ロジックの弱点を突くために意図的に作った3つのテスト用データで両方のバージョンを試したところ、旧版はそのうち2つのケースで誤った判定を返すことがわかった。3つ目のケース(正しく検出されるべき典型的なパターン)については、旧版・修正版ともに正しく判定できていた。

「今日は踏まなかった」と「問題がない」は違う

つまり「差分0件」という結果は、「不具合が存在しない」ことの証明ではなく、「今日届いた11件のデータの中に、たまたまその不具合を踏むパターンが含まれていなかった」というだけのことだった。実際のデータで一致したという事実は安心材料にはなるが、それだけで「問題は解消した」と言い切ってしまうのは、母数の中に不具合を再現する条件がたまたま含まれていなかっただけかもしれない、という可能性を見落とすことになる。11件という母数は、日々の運用の中では決して少ない数ではないが、不具合を検出するための母数としては十分ではなかった。

この2つの出来事に共通しているのは、どちらも「一度測った」「差分が出なかった」という結果を、そのまま「実態を正しく捉えられた」という結論にすり替えかけていたことだ。以前の記事「1サイトの実測は仮説、2サイトの一致は事実 ── llms.txtを8言語サイトでも測ったら、AIクローラーが1件も来ていなかった」で書いたのも、この種の見誤りだった。1回の測定・1つの母数での一致は、それだけでは仮説の域を出ない。今日の2件は、その教訓を書いた側自身が、同じ日に同じ形でつまずいたという記録でもある。

WEBディレクターが数字を受け取るときの3つの手順

ここまで見てきた事例——AOPの「7.1%の実測を2027年半減へ外挿した」話、Orbit Mediaの「AI経由という分類自体がパターンマッチングの産物」だった話、Profoundの「平均0.57がカテゴリ別のマイナス0.98からプラス0.97までを覆い隠していた」話、そして当サイト自身の「測り方によって結果が変わった」話。これらに共通する、数字を受け取るときの手順を3つにまとめておく。どれも特別な分析ツールを必要とするものではなく、記事を読むときに立ち止まって自分に問いかけるだけで実践できる。

1. 実測の母数を確認する

その数字は、何件・何サイト・どの期間を対象に、直接観測されたものか。AOP調査であれば「108億ページビュー・6ヶ月・うちQ1→Q2の一四半期で7.1%減」がここにあたる。この母数の外側にある数字(2027年の予測など)は、別の性質のものとして扱う。母数が明記されていない数字、あるいは「〜と言われている」「〜という調査結果もある」といった曖昧な形でしか出典が示されていない数字については、鵜呑みにする前に一段階の警戒を挟んだほうがいい。

2. 外挿かどうかを見分ける

見出しに出てくる数字が、実測された数字なのか、それとも実測値に「この傾向が続くなら」という仮定を掛けたものなのかを分けて読む。外挿を使うこと自体は問題ではないが、外挿だと明示されていない外挿は、実測と同列に扱ってはいけない。特に「〜年までに」「〜倍になる」といった未来時点を含む断定的な表現には、その裏にどんな仮定が置かれているかを一度確認する習慣をつけたい。

3. 分類・識別のロジックを確認する

「AI経由」「AI Overviews由来」といったラベルが、具体的にどんな仕組みで付けられているかを確認する。ドメインリストとのパターンマッチングであれば、そのリストの範囲外は数字に含まれていない可能性がある。この確認は流入元の分類だけでなく、コンバージョンそのものをどう定義しているか——何がコンバージョンとしてカウントされ、何が除外されているか——についても同じように必要になる。自分たちの計測ツールについても同じ確認を怠らない——今日の自己実証で当サイトが直面したように、「動いているはず」という前提は、実際に末尾まで、複数の条件で確認するまでは仮説にとどまる。一度の一致は仮説であって、証明ではない。

この3つの手順は、それぞれ数分あれば実践できる。母数を確認するには出典の元記事を開いて調査概要を読むだけでよく、外挿かどうかを見分けるには見出しの中に「〜まで」「〜になる」という未来断定表現があるかを探すだけでよく、識別ロジックを確認するには「どうやって分類したか」という一文を探すだけでよい。手間としては軽い。ただ、この軽い手間を省略するかどうかで、社内やクライアントに渡す報告の質は大きく変わってくる。

まとめ

「Google検索流入が2027年に半減する」という見出しは、実際には一四半期分・7.1%減という一点の実測値に、その傾向が続くという仮定を掛けたものだった。「AI経由のコンバージョン率が高い」という数字は、AI経由かどうかの判定自体がドメインリストとのパターンマッチングという、まだ検証途上の識別ロジックに依っていた。「言及と選択の相関は0.57」という数字は、221件のタスクという母数から算出されたもので、カテゴリ別には大きく振れ、その振れ幅の下端については調査元自身が、ブランド数の少なさゆえのノイズだろうと注記していた。

そして当サイト自身も、今日この記事を準備する過程で、同じ対象を測っているつもりで測り方によって違う結果を出し、「差分0件」という一致を「問題なし」の証拠だと早合点しかけた。AI検索まわりの数字は、いま大量に流通している。だがその多くは「実測値」ではなく「実測値に仮定を掛けたもの」であり、その境目を引くのは、数字を発表する側ではなく、受け取る側の仕事だ。

今日取り上げた3つの調査は、どれも作為的にミスリードを狙ったものではないと考えている。AOPも、Orbit Mediaも、Profoundも、それぞれの立場で誠実にデータを集め、公表している。問題があるとすれば、それは調査そのものではなく、調査結果が見出しになり、SNSで転載され、伝言ゲームのように広がっていく過程で、母数や条件節が少しずつ削られていくという情報流通の側の構造にある。だからこそ、受け取る側が最後の砦になる必要がある。

数字が強い見出しをまとって届くとき、その強さの分だけ、一度立ち止まって母数と仮定を確かめる価値がある。今日の記事がその立ち止まりの一助になれば十分だ。

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監修・運営 池田 南美夫(株式会社ツクルン 代表 / Web アドバイザー)

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