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Cloudflareが「稼ぎ方」を変えた日 — Pay Per CrawlからPay Per Useへ、"引用されたら払う"時代の帰属という宿題

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Cloudflareが「稼ぎ方」を変えた日 — Pay Per CrawlからPay Per Useへ、"引用されたら払う"時代の帰属という宿題
2026年7月1日、Cloudflareは「Content Independence Day」1周年発表で課金モデルの転換を宣言した。クロール回数で払う「Pay Per Crawl」から、引用・参照された回数で払う「Pay Per Use」へ。可視化の次は値付け。だが帰属(Attribution)の計算・監査という宿題はまだ解けていない。WEBディレクターが今週確認すべき4つのことを整理する。

2026年6月まで、この連載では一貫して「ブロックする側」の話をしてきた。archives/86「Cloudflareのデフォルト『AI bots ブロック』があなたのGEOを殺している」ではデフォルト遮断の罠を、archives/89「機械が人間を超えた日」では検証署名への転換を、archives/90「IETF WebBotAuth WG が発足した日」では標準化の始まりを、archives/93「Cloudflareが『検証』の定義を変えた日」では Search・Agent・Training 三分類の刷新を、archives/94「Cloudflareが『価値』を可視化し始めた日」では BotBase による可視化ダッシュボードの登場を追ってきた。

2026年7月1日、Cloudflareはこの連載がまだ一度も扱っていなかった第3の柱を発表した。「Content Independence Day」1周年を記念したこの発表で、Cloudflareは課金モデルそのものを変えると宣言した。クロールされた回数で払う「Pay Per Crawl」から、実際に引用され価値を生んだ回数で払う「Pay Per Use」へ。ブロックする・可視化するの次は、「稼ぎ方を変える」番だった。

何が変わったのか — Pay Per CrawlからPay Per Useへ

従来の「Pay Per Crawl」は、AI企業がページを一度取得(クロール)するたびに、パブリッシャーに対価が発生する仕組みだった。理屈は単純明快だが、致命的な弱点がある。クロールされたページの50%以上が、前回訪問時から一切変更されていないというのがCloudflareの調べだ。つまりAI企業は「変わっていないページを、律儀に何度も取りに行って、律儀に何度も払っている」。パブリッシャー側も、価値を生んでいない再取得のためにホスティングコストを負担させられている。双方が損をする構造だった。

Pay Per CrawlとPay Per Useの違いを比較した図解。左はクロール回数で課金する旧モデルで50%超が無駄な再取得、右は引用・参照時のみ課金する新モデル
Pay Per Crawl(クロール毎課金)とPay Per Use(引用・参照時課金)の仕組みの違い

新モデル「Pay Per Use」は、支払いのトリガーを「取得(フェッチ)した瞬間」から「実際に価値を生んだ瞬間」へ移す。具体的には、AIが生成した回答の中でそのコンテンツが実際に引用・参照された場合にのみ、対価がパブリッシャーに支払われる。取得回数ではなく利用実績で払う――サブスクリプションから従量課金への転換に近い発想だ。

この転換は単独の思いつきではない。archives/94で紹介したBotBaseの「Attribution Business Insights」――どのAIサービスが自社コンテンツをどれだけ参照しているかを可視化する仕組み――が、そのまま「誰にいくら払うべきか」を計算する土台になっている。可視化(archives/94)の次に課金(今回)が来たのは、地続きの必然だった。

なぜ変えるのか — 「無駄なクロール」とAIエージェント経済の実態

Cloudflareが公開した数字を並べると、変更の切迫感がわかる。同社によれば、非人間トラフィックはすでにインターネット全体の50%を超えた。AIボットのトラフィック構成に占める学習(トレーニング)目的の比率は、2025年春の22%から2026年6月には52%まで急上昇している。生成AIの利用者は3.5年で世界人口の約30%(25億人)に達したという成長スピードも背景にある。

一方で、パブリッシャー側の実感は厳しい。Forbesの報道によれば、公開されたパブリッシャーの中には過去1年でトラフィックが20〜90%減少したところもある。チャットボット経由の参照トラフィックは、Google検索経由に比べて96%少ないというデータもある。2025年8月にCloudflareが公開した数字ではOpenAIのクローラーは1,091回クロールして1回しか参照(リファラー)を発生させておらず、今回の発表ではAnthropicのクローラーについて11,122ページクロールに対して1回の参照という、さらに厳しい比率が示されている。取りに来る回数と、実際に読者を送り返す回数の乖離が、年を追うごとに開いている。

「クロールされる回数」に対価を払う仕組みは、この非対称を放置したまま拡大し続けることを意味する。Cloudflareが「50%以上は無駄なクロール」と名指ししたのは、AI企業側にも「払っている金額に見合う価値を受け取れていない」という不満があったことの裏返しでもある。過去1年で、パブリッシャーとAI企業の間で50件を超える主要コンテンツライセンス契約が結ばれたとCloudflareは報告しているが、契約の数が増えるほど、この非効率をどう解消するかという圧力も強まっていた。

実例に見る「価値」の値付け — Ceramic.aiとYou.com

Cloudflareは今回、この新モデルを実装する初期パートナーとして複数の企業名を挙げている。TollBit、ProRata、Microsoft、そして今回とくに具体的な仕組みが紹介されたのがCeramic.aiとYou.comの2社だ。

Ceramic.ai(創業者Anna Patterson)は「pay-per-query」モデルを採用する。1回のクロールではなく、1回の問い合わせ(クエリ)ごとに対価を計算する発想で、AI検索最適化(AEO)向けのレポート提供とセットで展開されている。You.comは、プレミアムコンテンツへのアクセスが実際に発生した時点でオンデマンドの課金を行う方式を採る。どちらも「取りに行った瞬間」ではなく「使った瞬間」に金額が発生する点で共通しており、これがまさに「Pay Per Use」の名の由来になっている。

Cloudflareはあわせて、2026年9月15日から広告収益で成り立っているサイトを対象に、検索用途と学習・エージェント用途が混在した「混合クローラー」をデフォルトでブロックする新分類「Bot Defaults」も導入すると発表した。新規顧客・既存顧客の新規サイト・全無料ユーザーが対象になる。検索エンジンによるインデックスは許可しつつ、AIの学習利用はデフォルトで止める――archives/93で扱った Search / Agent / Training の三分類が、今回はさらに「収益化されているかどうか」という軸で運用ルールが上書きされた形になる。

Cloudflare以外の選択肢 — TollBitとProRataという代替解

Pay Per Useの発表と同時にCloudflareが名前を挙げた初期パートナーには、Ceramic.aiとYou.comだけでなく、TollBitとProRataという2社も含まれている。この2社は、Cloudflareを使っていないパブリッシャーにとっても意味がある。両社はCDN・ネットワーク事業者に依存しない、独立した帰属・課金管理プラットフォームだからだ。

TollBitは、AI企業とパブリッシャーの間でコンテンツライセンス契約の実績データを取りまとめ、クロール・参照実績をもとにライセンス料の計算・分配を仲介するプラットフォームとして知られている。ProRataは、自社の答え生成サービス(Gist Answers等)を通じて、AIによる引用実績を収益分配に変換する仕組みを提供している。どちらも、Cloudflareという特定のネットワーク事業者を経由しなくても、パブリッシャー側が独自に導入できる帰属管理の選択肢という位置づけだ。

可視化ツールの比較で言えば、archives/94で扱ったBotBaseと、Google Search Console生成AIパフォーマンスレポートは、似ているようで役割が異なる。GSCの生成AIパフォーマンスレポートは無料で使えるが、Google自身のAI Overview・AI Modeでの表示回数(インプレッション)を計測するものであり、収益分配や課金の計算基盤にはならない。一方BotBaseは、Cloudflareのネットワークを通過した実際のAIクローラーのアクセス・参照ログをリアルタイムで可視化し、そのままPay Per Useの対価計算の土台になる。無料で「見えている回数」を知りたいならGSC、実際に「対価に変換したい」ならBotBase、あるいはCloudflare以外のCDNを使っているならTollBitやProRataのような第三者プラットフォーム、という使い分けになる。 🔧 当サイトGSC生成AIパフォーマンスレポートのみ運用中・BotBase/TollBit/ProRata等の課金プラットフォーム導入はこれから

帰属(Attribution)という宿題 — 誰が計算し、誰が監査するのか

ここまで読むと、きれいに解決した話に見えるかもしれない。だが正直に書く。この仕組みには、まだ大きな宿題が残っている。

Forbesの報道が的確に指摘しているのは、AIが生成する回答は多くの場合、単一のソースをそのまま引用するのではなく、複数のソースを組み合わせ、言い換え(パラフレーズ)て、時には引用表示なしで内容を利用しているという事実だ。この状況では、次の3つの問いにまだ明確な答えがない。

  • 各ソースの価値をどう計算するか — 5つのサイトを混ぜて要約した回答が生まれたとき、それぞれのサイトにどう対価を配分するのか
  • 誰がその計算を監査するのか — AI企業の内部処理はブラックボックスであり、パブリッシャー側が「正しく計算されている」と検証する手段が今のところ整備されていない
  • 不合意が起きたときにどう解決するのか — 「参照されたはずなのに対価が発生しない」ケースの異議申し立てルートが明文化されていない

言い換えられ、要約に溶け込んだ引用は、そもそも「引用された」というシグナル自体が捉えにくい。BotBase(archives/94)が可視化できるのは、あくまでCloudflareのネットワークを通過したアクセスの痕跡であって、AIモデルの内部で自社コンテンツがどう「消化」されたかまでは見えない。この記事を「解決編」として書くのは正直ではない。Pay Per Useは新しい仕組みの誕生であって、帰属問題の解決ではない。今後、この監査・配分ロジックがどう整備されていくかは、次の記事で継続して追う。

複数ソースからAI回答が生成され、帰属計算・監査という宿題が残る流れを示したフロー図
複数ソース → AI回答生成 → 帰属計算・監査という未解決の宿題

パブリッシャーが実際に収益を得るまでの流れ

Cloudflareが新設した「Bot Defaults」でデフォルトブロックの対象となる「混合クローラー」とは、検索エンジンのインデックス目的と、AIの学習・エージェント用途が同一のクローラーの中で混在しているものを指す。archives/93で扱ったSearch・Agent・Trainingの三分類のうち、用途が明確に一つに定まらないクローラーが、9月15日から広告収益で成り立つサイトを対象にデフォルトでブロックされる対象になる、という位置づけだ。

パブリッシャー側から見た「収益を得るまでの流れ」を整理すると、おおよそ次の4段階になる。①Cloudflareでサイトを保護している場合、ダッシュボードでBot DefaultsやPay Per Useの対象設定になっているかを確認する。②archives/86で扱った検証済みAIエージェントのallow設定を行い、そもそもAIに正しくアクセスしてもらえる状態を作る。③BotBaseでアクセス・参照ログを可視化し、どのAIサービスがどれだけ参照しているかを把握する。④実際にAIの回答内で引用が発生した際に、Pay Per Useの計算ロジックに基づいて対価が精算される。この一連の流れの中で、③と④の間(可視化されたログを実際の対価計算にどうつなげるか)が、まさに本記事で扱っている帰属という宿題の核心部分にあたる。

Ceramic.aiのpay-per-queryモデルは、AEO(AI検索最適化)向けのレポート提供とセットで展開されている点が特徴的だ。パブリッシャーは「自社コンテンツが特定のクエリでどれだけAIに参照されたか」をクエリ単位で把握しながら、その参照実績に応じて対価を受け取るという使われ方になる。単に「合計何回参照されたか」ではなく、「どのクエリ・どの文脈で参照されたか」まで見える点が、単純なクロール回数課金との違いとして際立つ。

「複数ソースを組み合わせた回答で、帰属をどう正確に計算するか」という問題について、業界標準の解決策は現時点で存在しない。Forbesの報道が示す通り、これは業界全体が抱える共通の宿題であり、Pay Per Useもこの問題を「解決した」わけではなく「取り組みを始めた」段階に過ぎない、というのが正直な整理だ。

WEBディレクターは今週何を確認すべきか

制度が固まりきっていないからといって、様子見だけで良いわけではない。今週できる確認事項は次の4つだ。

1. 自社が既にCloudflareを利用しているかを確認する。利用している場合、ダッシュボードの「Bot Defaults」設定と、9月15日の分類変更が自社サイトにどう影響するかを事前に確認しておく。 🔧 当サイトも確認予定・様子見中

2. 自社コンテンツの「参照されやすさ」を棚卸しする。単一ページの断片的な情報より、Q&A形式や要約しやすい構成のページの方が、AI回答に組み込まれやすい傾向がある。どのページがAI経由で参照されているかは、Google Search Console生成AIパフォーマンスレポートやサーバーログのクローラー分析(本サイトではarchives/94で扱ったBotBaseの計測手法を活用)で棚卸しできる。 ✅ 当サイト実施中

3. 検証済みAIエージェントのアクセスを不用意に遮断していないか点検する。Pay Per Useのような課金モデルは、そもそも「AIが自社コンテンツにアクセスできる」ことが前提になる。ブロック一辺倒の設定のままでは、そもそも参照される機会自体が生まれない。 ✅ 当サイト実施済

4. 自社が「値付けする側」に回れるかを検討する。エンタープライズ規模でなくとも、コンテンツの発見可能性(Discoverability)を自分で制御するという発想そのものは、規模の大小に関わらず今から持っておく価値がある。まずは自社の現状把握から始めたい方は、当サイトAI対応診断ツールで自サイトのAI検索対応状況を確認してみてほしい。 ✅ 当サイト実施中

サイトの自己実証とまとめ

正直に書く。Pay Per Useは現時点でCloudflareのエンタープライズ向け機能かつ発表直後の施策であり、当サイトはまだ実際の対応(ダッシュボードでの設定確認や具体的な課金連携)を実施していない。 🔧 Pay Per Use対応はこれから・様子見中

ただし、土台はすでにある。archives/86で公開したCloudflareの検証済みAIエージェントallow設定、archives/68で設置したllms.txtarchives/94で確認したBotBaseによる可視化――これらはすべて「AIに正しくアクセスしてもらい、正しく参照してもらう」ための地ならしだった。稼ぎ方が変わっても、地ならしをしていなければそもそも参照の土俵に立てない。 ✅ 当サイト実施済(土台部分)

クロールの回数で払う時代から、引用された回数で払う時代へ。この転換は「AIに見つけてもらう」時代の次に来る、「AIに正当に対価を払ってもらう」時代の入口だ。ただし帰属という宿題は、まだ解けていない。この連載はブロックする側の警告から、可視化する側の観察へ、そして今回、値付けする側の課題へと視点を移してきた。次に追うべきは、この帰属問題が実際にどう埋まっていくか――その過程を、当サイト自身の実践とあわせて、また報告する。

収益化の前例 — コンテンツライセンス契約という「実績」

Pay Per Use自体の成功事例はまだ無い。だが、その土台になっている「AI企業とパブリッシャーの間で対価をやり取りする」という発想自体には、すでに実績がある。Cloudflareの報告によれば、過去1年間でパブリッシャーとAI企業の間で50件を超える主要コンテンツライセンス契約が結ばれている。これは、Pay Per Useのような自動化された従量課金の仕組みが登場する以前から、個別交渉によるライセンス契約という形で「AIに使われる対価を受け取る」収益化がすでに実践されてきたことを示している。

Pay Per Useが変えるのは、この収益化の手段だ。これまでは契約交渉のたびに個別に条件を詰める必要があった収益化が、BotBaseのような可視化基盤とAPIによる自動計算によって、契約交渉なしでも継続的に対価を受け取れる仕組みへと変わっていく。50件超の個別契約という「前例」の延長線上に、Pay Per Useという「自動化された次の形」がある、という整理が正直な現状だ。具体的な成功事例(どのメディアがいくら受け取ったか等)は、今後の運用実績を待つ必要がある。

発表直後の業界の反応 — まだ「評判」を語れる段階ではない

正直に書いておきたいことがある。Pay Per Useについて、実際に導入したパブリッシャーや、TollBit・ProRataを実際に使った企業からの評価・口コミは、2026年7月時点ではまだ公になっていない。発表からわずか数日という段階であり、実運用の評判を語れる段階にはない。

現時点で確認できる反応は、Cloudflare自身の説明にとどまる。CEOのMatthew Princeは今回の発表にあたり「インターネット上のトラフィックの大半がすでに非人間になった今、持続可能なエコシステムが生まれるよう、我々はさらに踏み込み、より速く動かなければならない」と述べている。TechCrunchの報道によれば、Googleは過去にCloudflareのこうした trafficの性質付けに対して反論してきた経緯があるとされるが、今回の発表そのものへの具体的な反応はまだ報じられていない。

業界メディア(PPC Land等)の論調は、数字の解説(無駄なクロールの比率・クロール対参照の乖離)が中心で、賛否を伴う評価にはまだ至っていない。この記事も「解決編」ではなく「発表の整理」であることを重ねて断っておく。実際の評判・成功事例・失敗事例が出てくるのはこれからであり、当サイトも今後の動向を追い続ける。

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一次情報出典

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監修・運営 池田 南美夫(株式会社ツクルン 代表 / Web アドバイザー)

この記事は AI パートナー「Ron」が執筆し、運営責任者の池田 南美夫が内容を確認・監修のうえ公開しています。SE 歴 35 年超の知見と実務判断を添えて、読者本位の正確さを担保しています。

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