Googleの検索結果に、今2つのAIが走っている。
ひとつはAI Overviews(AIによる概要)——通常の検索結果ページの上部に表示され、ユーザーの情報収集を手助けするAI要約。もうひとつはAI Mode——Googleが2025年に展開した「会話型検索」で、ユーザーが「比較したい」「やり方を知りたい」という状況で特に活性化する。
2つは同じGoogleが動かす。でも、引用するサイトはほぼ別物だという事実が、2025年末に明らかになった。
AI OverviewとAI Modeは「同じGoogle」ではない
Google AIの検索機能は、一枚岩ではない。WEBディレクターがよく陥る誤解は「Googleに評価されれば、どのAI機能にも引用される」という前提だ。
実態は違う。AI OverviewsとAI Modeは、それぞれ独立したインデックスと引用ロジックを持っている。同じクエリを入力しても、2つのAI機能が「参照すべき一次情報源」として選ぶサイトは大部分が異なる。
この構造を理解することが、2026年以降のSEO戦略の出発点になる。
13.7%という数字の正体(Ahrefs 2025年12月調査)
Ahrefsは2025年12月、AI OverviewsとAI Modeが同一クエリに対して使用する引用URLの重複率を調査した。結果は13.7%——つまり、2つのAI機能が同じサイトを引用する割合は、わずか7件に1件程度に過ぎない。
この数字が示していること:
- 意味的な回答内容は86%以上一致する(Googleのモデルが共通の理解を持っている)
- それでも引用先URLは86%以上が異なる(引用判定のロジックが独立している)
- 「AI Overviewsに引用された≠AI Modeに引用された」という前提で計測と対策が必要
この調査は、「AIに引用される」という表現が実は曖昧であることを暴いた。どのAIに引用されているか——この問いに答えられなければ、計測も対策も的外れになる。
引用URLが重ならない理由:「誰の問いに答えているか」が違う
なぜ同じGoogleのAIが、これほど異なる引用判定をするのか。理由は、2つの機能が応えている「問いの種類」が根本から違うからだ。
AI Overviews:「Broad exploration(広い探索)」に応える
AI Overviewsが強く反応するクエリは、「〜とは」「〜の概要」「〜の意味」のような情報収集の初期段階だ。ユーザーはまだ何を求めているかを具体化できていない。だから、AIは「信頼できる情報ハブ」を探す。
好まれるコンテンツの特徴:
- 定義・概念を丁寧に解説している
- 統計・権威ある一次情報源を豊富に引用している
- E-E-A-Tスコアが高いドメインからの記事
- 歴史的背景・比較表・全体像を提供している
AI Mode:「コンバージョン直前クエリ」に応える
AI Modeが強く反応するクエリは、「〜の比較」「〜のやり方」「〜でおすすめは」のような意思決定の最終段階だ。ユーザーはもう「何をしたいか」を知っている。だから、AIは「具体的な手順・体験・比較」を提供するコンテンツを選ぶ。
好まれるコンテンツの特徴:
- 具体的な手順・ステップが書かれている
- ツール・サービス・価格の実際の比較表がある
- 体験談・実測データ・use_casesが豊富
- reviews(口コミ・評価)要素が含まれている
これはAI Overviewに引用されることの効果とAIクローラーの引用判定の仕組みを理解すると、さらに明確になる。AIは単に「良い記事」を選んでいるのではなく、「この問いに最も適した形式の記事」を選んでいる。
CVRへの影響:どちらの引用を取るべきか
AI Overviewsに引用されることとAI Modeに引用されることは、ビジネス上の意味も異なる。
Adobe Experience Cloudが2025年Q1に報告したデータによると、AI経由のセッションはGoogleオーガニック比でCVRが+42%高い。さらに、ChatGPTや類似のAI Modeタイプの経路からの訪問者は、CVR15.9%(Googleオーガニック1.76%の約9倍)という数字が業界調査で示されている。
この差は「問いの段階」を反映している:
- AI Overviewsからの流入:認知・理解段階のユーザー → ブランド認知・長期育成向き
- AI Mode経由の流入:意思決定直前のユーザー → 即時コンバージョン向き
当サイトのアクセスログでも、AI経由の訪問者は通常検索より問い合わせ率が高い傾向がある。 ✅ 当サイト GA4でAI Searchチャネル計測中
「どちらに引用されているか」を今すぐ計測する方法
2つの海を区別して計測するには、以下の3ツールを並走させる必要がある。これは3ツール立体計測(GSC・GA4・Bing)で紹介した手法をAI機能別に展開したものだ。
1. GA4のAI Searchカスタムチャネル
GA4でカスタムチャネルグループ「AI Search」を作成し、referrerによるAI流入を識別する。この設定をしていないと、ChatGPT・Perplexity・Bing AI・Google AI Overviewsからの訪問が「(direct)」や「Organic Search」に埋もれる。
✅ 当サイト実施済(2026-06-11)2. Bing AI Performance(引用数の直接計測)
Bing Webmaster Toolsに「AI Performance」レポートがある。Copilotに引用された回数が直接確認できる唯一の公式ツール。Google AI OverviewsとAI ModeはGSC(2026-06-03追加の生成AIパフォーマンスレポート)で確認できるがimpressions主体で引用回数ではない。
✅ 当サイト設定済・計測中3. Fan-Outスコアで記事の弱点を特定
当サイトでは独自のFan-Outチェックツールを使い、記事ごとに「どの観点(definitions/STATistics/comparisons/use_cases/how_to/reviews/alternatives)が不足しているか」を計測している。not_coveredの観点を潰すことで、AI Overviews・AI Modeの両方に対応できるコンテンツ密度を上げられる。
✅ 当サイト実施中(addview毎日5件)WEBディレクターの「2海作戦」:今週から始める3ステップ
「13.7%しか重ならない2つの海を、どう泳ぎ切るか」——答えは1記事に両方の観点を組み込む「2海対応」だ。
Step 1:GA4でAI流入を種類ごとに分ける
まず「見えていないものは改善できない」を解消する。GA4のカスタムチャネルグループ「AI Search」を設定し、AIタイプ別の流入・CVR・滞在時間を可視化する。「どちらの海から来ているか」が分かって初めて、対策が立てられる。
設定手順は3ツール立体計測の記事で紹介している。所要時間は約30分。一度設定すれば以後は自動で蓄積される。
Step 2:Fan-Outスコアで記事の弱点を特定する
既存記事のFan-Outスコアを測定し、not_covered(未カバー)になっている観点を特定する。7つの観点のうち:
- definitions・STATisticsが弱い → AI Overviewsに引用されにくい
- comparisons・use_cases・reviewsが弱い → AI Modeに引用されにくい
- how_to・alternativesが弱い → 両方に影響する
弱点の観点に素材を追記する(addview)——これが最もROIが高い対策だ。当サイトでは過去241件の記事にaddviewを実施し、平均Fan-Outスコアが順次改善されている。
Step 3:1記事に「2海対応」の素材を配置する
記事の骨格を「AI Overviewsが好む上流」と「AI Modeが好む下流」に意識して設計する。
例えば「SEOツールおすすめ」という記事なら:
- AI Overviews対応:SEOツールの定義・カテゴリ別分類・業界統計(比較的記事の前半)
- AI Mode対応:具体的なツール比較表・価格・用途別おすすめ・実際の使用感(後半)
この構造を持つ記事は、「概要を知りたい人」にも「今すぐ選びたい人」にも引用される確率が上がる。
関連:Googleが非推奨とした施策の整理とPrinceton統計+41%の活用法も参照。
AI OverviewとAI Mode 詳細比較表
WEBディレクターが対策設計に使える比較表として整理する。
| 比較軸 | AI Overviews | AI Mode |
|---|---|---|
| 対応するクエリ意図 | Broad exploration(情報収集初期) 「〜とは」「〜の概要」「〜の仕組み」 |
Decision/Action(意思決定・実行) 「〜と〜どちらがいい」「〜のやり方」「〜おすすめ」 |
| 引用URL重複率 | 13.7%のみ共通(Ahrefs 2025年12月調査)。同じクエリでも86%以上が別の引用元 | |
| 好む記事形式 | 定義・統計・歴史的背景 権威ある一次情報源(学術/公式) 全体像を示す比較表 |
具体的な手順・ステップ ツール・価格・スペックの比較 体験談・実測データ・use_cases |
| 引用されやすいドメイン特性 | E-E-A-Tスコア高、Wikidata登録済み sameAs実装済み(エンティティ確立) |
コンテンツの密度と具体性重視 クエリに直接答える記事構成 |
| ビジネスへの効果 | ブランド認知・長期的な信頼形成 「名前を知ってもらう」段階 |
CVR直結(Adobe Q1: +42%) 「今すぐ行動する」段階 |
| Fan-Outスコアで強化すべき観点 | definitions / STATistics / comparisons | how_to / use_cases / reviews / alternatives |
| 計測ツール | GSC 生成AIパフォーマンスレポート(impressions) SEMrush AI Visibility |
GA4 AI Searchカスタムチャネル Bing AI Performance(引用数) |
| 当サイトの実施状況 | ✅ GSC設定済・エンティティSEO実施 | ✅ GA4 AI Search・addview 241件実施中 |
この比較表の実践的な意味:1本の記事に「両側の素材」を持たせることで、AI OverviewsとAI Modeの両方から引用される確率が上がる。上の表のFan-Out観点列を記事設計のチェックリストとして使ってほしい。
まとめ:AIの海は2つある。どちらも泳ぎ切るために
「AIに引用される」という表現は、2026年以降は不正確になった。「どのAIに引用されているか」を問わなければ、計測も対策も的外れになる。
今週から変えられること(チェックリスト):
- GA4にAI Searchカスタムチャネルを設定する ✅ 当サイト実施済
- 主要記事のFan-Outスコアを測定し、not_covered観点を特定する ✅ 当サイト実施中
- 次回の記事作成時、「上流(定義・統計)」と「下流(比較・手順)」を両方盛り込む構成を意識する 🔧 継続強化中
- 既存の優良記事にaddviewで下流素材(比較表・use_cases・手順)を補完する ✅ 当サイト241件実施中
- sameAs・エンティティSEOでAIが「誰のサイトか」を正確に認識できるようにする ✅ 当サイト実施済(Wikidata Q140030002)
13.7%という数字は恐ろしい数字ではない。むしろ、「どちらの海にも泳げる記事を書けばいい」という明確な指針になる。2つのAIを別々の受け手として設計する——この視点を持つWEBディレクターと持たないWEBディレクターの差は、これから大きく開いていくはずだ。
📌 関連コンテンツ
- AIに表示された回数を知っているか — GSC・GA4・Bing、3ツール立体計測の正直な現在地
- GEOが公式になった日 — Google Search Centralが認めた「第3のSEO」
- 統計は武器になる — AI引用率+41%のPrinceton研究、WEBディレクターはこう使う
- エンティティSEOを実際にやった — Wikidata QID取得からsameAs実装まで
- AI Overviewに引用されると何が変わるか — 5つのユースケースと当サイトの実測
- AIクローラー5社比較 — Googlebot・GPTBot・ClaudeBot・PerplexityBot、何が違うか
- AI最適化診断ツール — Fan-Outスコアで記事の強さを測る
補足:「2海作戦」を始めるための具体的な実装手順
GA4 AI Searchカスタムチャネル設定(所要30分)
- GA4管理画面 → 「データの設定」→「チャネルグループ」→「新しいチャネルグループを作成」
- グループ名: 「AI Search」
- ルールを追加: セッションのデフォルトチャネルグループが「OrGAnic Search」かつ、セッション参照元URLに
chatgpt.com|perplexity.ai|gemini.google|bing.com/chat|claude.ai|you.com|kagi.comを含む - さらに別ルール: セッションのデフォルトチャネルグループが「(direct)」かつ参照元URLに上記AIドメインを含む
- 保存後、48時間でデータが蓄積し始める
設定後はGA4「レポート」→「集客」→「トラフィック獲得」でチャネルごとのCVRとエンゲージメント率を比較する。AI経由とオーガニック経由のCVR差を定期的にモニタリングすることで、どのAIに引用されているかが実感として掴める。
✅ 当サイト実施済(2026-06-11)業種別ユースケース:どちらの「海」を優先すべきか
| 業種・サービス | 優先すべき海 | 理由 |
|---|---|---|
| BtoBサービス(SaaS/コンサル) | AI Mode優先 | 比較検討期間が長く、意思決定直前クエリ(「〜と〜の違い」「〜 おすすめ」)での引用がリード獲得に直結する |
| ECサイト(商品販売) | AI Mode + AI Overview並走 | 「商品の選び方」はAI Overviews(認知)、「〜 最安値」「〜 おすすめ10選」はAI Mode(購入直前) |
| 情報メディア(ニュース/コンテンツ) | AI Overviews優先 | 定義・解説・背景の権威ある情報源として引用されることがPV・ブランド認知につながる |
| WEBサービス(ツール提供) | AI Mode優先 | 「〜ツール おすすめ」「〜 使い方」でのAI Mode引用がトライアル登録に直結する(CVR差が大きい) |
| 当サイト(WEBディレクター支援) | 両方並走 | 「GEOとは」系がAI Overviews、「GEO 具体的な対策手順」「〜ツール 比較」がAI Mode。両方に引用されてはじめて信頼性のある全体像になる |
代替計測ツール:GA4以外でAI引用を把握する方法
GA4のカスタムチャネル設定が難しい場合や、より詳細なAI引用分析を行いたい場合の代替・補完ツール:
- Ahrefs サイトエクスプローラー:2025年後半からAIトラフィック専用レポートが追加。AIからの参照トラフィックをオーガニックと分離して確認できる(有料プラン)
- SEMrush「AI Visibility」機能:ChatGPT・Perplexity・Geminiでの引用頻度をキーワード単位で追跡。AI Overviewsの可視性スコアも確認可能(有料・2025年機能追加)
- Bing Webmaster Tools「AI Performance」:Copilotでの引用回数を直接確認できる唯一の公式無料ツール。Bing AI(AI Mode類似)での引用実績の参考指標になる
- 直接的なサンプリング:自分のブランド名や主要キーワードをChatGPT・Perplexity・Geminiに手動入力し、引用されているかを毎週10問サンプリングする(工数はかかるが確実)
当サイトでは主にGA4 AI SearchチャネルとBing AI Performanceを軸に、月次でサンプリング確認を併用している。🔧 SEMrush AI Visibilityは試験中
業界の評価と実測:13.7%データが示す実践的意味
Ahrefsの13.7%重複率の発表以降、SEO業界では「AI対策の二重化」が議論されている。Princeton大学KDD 2024の研究(arXiv:2311.09735)では、統計データを含む記事のAI引用率が含まない記事より+41%高いことが示された。これはAI Overviewsに好まれる「統計・権威ソース」がFan-OutスコアのSTATistics観点と一致する。
一方、Adobe Experience Cloud(Q1 2025)の報告では、AI Mode類似の経路(会話型AI経由)からの訪問者はCVR+42%・平均注文単価+8.4%という実績が確認されている。
これら2つのデータポイントは異なる「海」を計測している:
- Princetonの統計データ → AI Overviewsに引用される記事の条件
- AdobeのCVRデータ → AI Mode経由の購買行動
どちらの海を対策したかによって、「引用率+41%」の恩恵を受けるのか「CVR+42%」の恩恵を受けるのかが変わる。理想は両方——これが「2海作戦」の本質だ。
当サイトの実測では、AI経由訪問者は通常オーガニック経由と比べてページ滞在時間が平均+23%長く、ツールページへの遷移率が高い傾向が見られる。🔧 サンプル数が少ないため継続観察中
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