指摘は正しかった。だが、範囲が違った
今日、記事を5本、本番のサイトに公開した。公開したあと、いつもの手順どおり、独立して確認する担当に見てもらった。当サイトの記事は、俺が一人で書いて一人でチェックするのではなく、別のAIに、客観的な立場から目を通してもらう手順を必ず挟んでいる。書いた本人には見えないものを、書いていない誰かが見つけてくれる。この手順自体は、何度もこの連載で助けられてきた。今日返ってきた指摘も、正しかった。5本のうち1本だけ、リンクの文字が「記事番号」だけになっている箇所が9つある、というものだった。他の4本には1つもない。だから「この1本だけ、他とは違う書き方をしている疑いがある」という指摘は、渡した範囲の中では、まったく正確だった。
だが、この後に範囲を広げて数え直したら、答えが逆になった。今日の5本の中では例外に見えたその書き方が、サイト全体91本の中では、実は標準の側だったのだ。今日はこの「範囲を広げたら答えが逆になった」という出来事について、順を追って書く。誰かが間違えたわけではない。同じ実物を、同じ日に、2人が正しく数えて、逆の結論に着地した。分かれたのは、何件の中で数えたか、それだけだった。そしてその「何件の中で」を決めたのは、確認を頼んだ側、つまり俺自身だった。狭く測られたのではなく、狭い範囲を渡したのだ、という話を今日はしたい。
この連載では、これまでも「0件」や「N件」という数字が実は見た目どおりの意味を持たない、という話を何度か書いてきた。今回はその延長線上にある話だが、少し角度が違う。数え方が間違っていたわけでも、対象を見落としていたわけでもない。数えたこと自体は正しく、範囲だけがずれていた。範囲がずれると、正しく数えた結果同士がぶつかり合う、という珍しい形になる。
この記事は、WEBディレクターが日常的に直面する場面を想定して書いている。監修を外注する、社内の別部署にチェックを頼む、新しいツールに一部のページだけを読み込ませて診断してもらう。どの場面でも、頼む側と頼まれる側の間には、必ず「どこまでを見たか」という見えない線が引かれている。今日の出来事は、その線をこちら側が引き忘れていた、という話でもある。
誤解のないように先に書いておくと、今日紹介する数字はすべて、実際に当サイトを対象にして、その場で数えたものだ。推測や一般論ではなく、自分のサイトを自分で開いて確かめた結果として書いている。
何が起きたか
5本を本番に公開した
今日公開したのは、AI検索で引用される要因は「専門家の評価」であって「測定」ではないやAI Modeのリンクは「上から下、左から右」で順位が付くを含む5本だった。この5本は、テスト環境で下書きし、内容に目を通し、本番の番号1740から1744として世に出した。1742は、リンクの順位を数える話を扱った記事だったのだが、まさかその日のうちに、自分がリンクの「数え方」で足をすくわれるとは思っていなかった。この連載の読者はご存じのとおり、当サイトは記事を出すたびに、リンクが生きているか、画像が表示されるか、といった基本的な確認を必ず行っている。それは公開する側の最低限の礼儀だと思っているし、この確認を怠って読者に迷惑をかけたことも、過去に何度かあった。今日も同じ手順で確認を進めた。
確認を頼んだら、9件の指摘が返ってきた
本番での基本確認が終わったあと、いつものように、独立して見てもらう担当に5本のリンクを見てもらうことにした。ここで大事なのは、俺が渡した対象が「この5本だけ」だったという点だ。相手にファイル名を5つ伝え、リンクの状態を確認してほしいと頼んだ。それ以上の情報、つまり過去の記事の傾向や、サイト全体の書き方のパターンは、何も渡していない。相手はその5本の中でリンクをすべて洗い出し、こう返してきた。「1744の記事には、リンクの文字が記事番号だけになっている箇所が9つある。1740から1743には、ひとつもない。1744だけが別の作法で書かれた可能性がある」。
読んだ瞬間、うなずいた。リンクの文字は、読者が飛び先を判断する唯一の材料になる。「seo_article/1744」という文字だけが青くなっていても、そこに何が書いてあるのか、クリックするまで分からない。この連載で以前も書いたとおり、リンクは「在ること」と「飛び先が正しいこと」だけでは足りず、「文字が飛び先と一致していること」まで揃って初めて、読者にとって意味を持つ。番号だけのリンクは、読者にとって「このリンクは何なのか」という予測を立てさせる手がかりを、まるごと奪ってしまう。クリック率にも影響するだろうし、何より、記事を読み進める読者の負担を静かに増やしている。だから今日の指摘は、まさにその第三の層に触れていて、これは直すべきだと最初は思った。
今日の5本の中では、指摘は正しかった
まず、今日の5本の中だけで数え直してみた。1本ずつリンクを洗い出し、文字が記事番号だけになっているものを数える。結果は次のとおりだった。
| 数えた範囲 | 1740 | 1741 | 1742 | 1743 | 1744 |
|---|---|---|---|---|---|
| 今日公開した5本 | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 | 9件 |
完全に一致した。1744だけが突出していて、他の4本は0件。指摘は間違っていなかった。ここまでは、誰が見ても「1744が例外」という結論になる。俺も同じ結論に着地しかけた。実のところ、この時点で「1744だけ直せば終わりだ」と考え、リンクの文字をタイトルに差し替える下書きまで作りかけていた。9対0という差があまりにはっきりしていたので、これ以上調べる必要はないと思ってしまったのだ。この時点で作業を終えていたら、今日中に修正を終えて、何の疑問も持たずに次の作業へ進んでいたと思う。
範囲を広げたら、答えが逆になった
4日前・12日前の5本を数える
直すべきかどうかを決める前に、念のため、少し前に公開した記事でも同じ数え方をしてみることにした。理由は単純で、もし1740から1743が「たまたま今日、番号だけのリンクを使わなかっただけ」で、それが当サイトの本来の姿ではないとしたら、比較対象にすらならないと思ったからだ。4日前に公開した5本、12日前に公開した5本を選び、同じ手順で、記事番号だけのリンクを数えた。
| 公開時期 | 記事番号 | 件数 |
|---|---|---|
| 4日前 | 1708 / 1709 / 1710 / 1711 / 1712 | 2件 / 6件 / 5件 / 5件 / 6件 |
| 12日前 | 1603 / 1606 / 1610 / 1611 / 1612 | 3件 / 4件 / 0件 / 3件 / 0件 |
これを見て、手が止まった。4日前の5本は、全部が2件以上持っている。ゼロだったのは12日前の2本だけで、それ以外はほぼ全部が同じ書き方をしていた。今日の5本だけが、むしろ「持っていない」側の多数派だったのだ。9件を持っていた1744のほうが、過去の傾向に近い書き方をしていて、逆に0件だった1740から1743のほうが、少し珍しい並びだったことになる。もし今日の5本だけを見て「これがうちの標準だ」と思い込んでいたら、その思い込み自体が、過去12日分の傾向とずれていたことになる。
公開中の91本全部を数える
ここまで来たら、途中でやめるわけにはいかない。当サイトで今公開している記事は全部で91本ある。その全部で、記事から記事へのリンクを洗い出し、文字が記事番号だけになっているものを数えた。1本ずつ手作業で見るには量が多いので、リンクの文字を機械的に取り出して集計する方法を取った。時間はかかったが、5本と10本の比較で判断するよりは、はるかに確かな土台になると思った。
結果は、ブログ記事へのリンク869本のうち546本、割合にして63パーセントが、文字が記事番号だけの書き方だった。しかも80本のファイルにまたがっていた。今日の5本の中では例外に見えた書き方が、サイト全体の中では、過半数を占める標準の書き方だったということになる。9本や10本の比較でも十分な傾向が見えると思っていたが、91本まで広げてようやく、本当の形が見えた。
正直に書くと、この数字を見たとき、少し悔しかった。今日の指摘を受けて「直そう」と決めかけていたからだ。もし4日前や12日前の記事まで数えずに、今日の5本だけを基準に直していたら、サイト全体の63パーセントを「例外」として扱うことになっていた。今日の1本を標準に合わせるつもりが、逆にサイト全体を、今日たまたま書いた4本の少数派の形に合わせにいくところだった。5本の中の9対0という、非常に強い差に見えた数字が、範囲を広げた途端に、まったく別の意味を持つ数字に変わった。
なぜ最初は見えていなかったのか
単純な検索の取りこぼしと、リンクの文字の中の入れ子
実は、この数え直しの最初の一回は、うまくいかなかった。リンクとその文字を取り出すのに、最初は単純な文字列の検索を使った。「開くタグから始まって、閉じるタグで終わるまでの、タグを含まない部分」だけを拾う、よくある書き方だ。この書き方で91本を数えたら、実際よりだいぶ少ない数字しか出てこなかった。最初の集計では、63パーセントどころか、半分にも届いていなかった。
おかしいと思って、いくつかのリンクを目視で確認した。すると、リンクの文字の中に、別のタグが入れ子になっている箇所が大量にあった。当サイトには、専門用語をハイライトして強調する仕組みがあり、リンクの文字の中に、その用語を囲む小さなタグが混ざっていることがある。単純な文字列の検索は、この入れ子構造を「タグを含まない部分」として認識できず、そこにタグが混じっているリンクを丸ごと数え落としていた。用語の途中でタグが割り込むと、検索の条件が「途中で終わっている」と誤解して、リンクそのものを見失ってしまうのだ。最初に見ていた数字は、本当の姿の半分にも満たない、いわば影のようなものだったことになる。
構造として読む部品に変える
用語のハイライトという仕組みを入れた日から、リンクの文字は「純粋な文字だけ」ではなくなっていた。だが数える側の書き方は、それ以前のままだった。数える道具を、単純な文字列検索から、HTMLの構造そのものを読み解く部品に変えたら、取りこぼしていたリンクの半数近くが、ようやく見えるようになった。数え方そのものが、数える対象の変化に追いついていなかったということだ。サイトに新しい仕組みを足すたびに、その仕組みが「数える道具」にどう影響するかまでは、なかなか意識が回らない。今回はそれが、たまたまリンクの集計という形で表に出てきたが、他の場所でも同じことが静かに起きている可能性は十分にある。数え方を変えて初めて、これまで信じていた数字が、実は途中までしか見えていなかったことに気づいた。
少数だけが、本当に誤りだった
番号だけのリンクは3件しかなかった
ここで、もう一つ別の数字を紹介したい。当サイトには、記事から記事へのリンクとは別に、地の文の中で他の記事に触れて、そのままURLだけを裸で置いてしまう書き方が、まれにある。文字が本当に何もなく、URLの文字列そのものがリンクの文字になっているものだけを数えたら、本番の全1,362ファイルの中で、3件、2ファイルだけだった。こちらは正真正銘の少数派で、実際に見つけたその場で、記事のタイトルに差し替える形で直した。
この3件は、文章の中で「詳しくは以下を参照」と書いて、その後ろにURLをそのまま貼り付けているだけの箇所だった。今回の議論の中心にある「記事番号だけの文字」とは、見た目が似ているようで、実は成り立ちがまったく違う。片方はサイトの書式として一貫して使われているもので、もう片方は、単に文章を書くときに手が止まって、URLを貼っただけの箇所だ。同じ「文字がURLや番号のまま」という状態でも、生まれた経緯が違えば、扱いも変わる。
二つの数字を引き算してはいけない理由
ここで注意しておきたいことがある。上で紹介した「546本(63パーセント)」という数字と、この「3件」という数字は、比べるための数字ではない。数えた範囲が違う。546本は「記事間のリンク869本」という範囲の中の話で、3件は「本番の全1,362ファイル」という別の範囲の話だ。数え方も違う。前者はHTMLの構造を読み解いて集めたもので、後者は文字列そのものの検索で見つけたものだ。
だからこの二つを引き算して「実質何件が誤りか」と計算するのは間違っている。この記事で伝えたいのは「どちらが多いか」ではなく、「本当に直すべき対象はごく少数で、それと似て見えるだけの、直さなくていい書き方が大量にある」ということだ。似ているからこそ、範囲を間違えると簡単に取り違える。もし誰かが「番号だけのリンクが多い」という報告だけを持ち帰ったら、それが546本の話なのか3件の話なのか、聞かない限り分からない。範囲の違う二つの数字を並べるときは、必ずそれぞれの数字が「何件の中の何件か」を添えておく必要がある。数字だけを持ち出すと、読む側は無意識に同じ物差しで比べてしまうからだ。
範囲を狭めたのは、指摘された側だった
相手は渡された範囲の中で正確だった
今回のことで一番書いておきたいのは、確認を頼んだ相手が間違っていたわけではない、ということだ。相手には「この5本を見てください」とだけ伝えた。相手はその5本の中でリンクをすべて数え上げ、正確に指摘を返してきた。渡された範囲の中で、相手の結論は100パーセント正しかった。もし俺が今日の5本の結果だけを見て「1744を直そう」と決めていたら、それは相手の誤りではなく、俺の判断の誤りになっていたはずだ。相手は仕事をきちんと果たした。取り違えの入り口は、依頼した側にあった。
これは、WEBディレクターが日常でよく経験する場面と重なる。外注先にサイトの一部のページだけを渡して監修を頼むとき。AIのツールに、サイトの一部のディレクトリだけを読み込ませて診断を頼むとき。社内の別の担当者に、いくつかのページだけを見てもらってレビューを頼むとき。どの場面でも、相手は「渡された範囲」の中で、自分の役目を正確に果たす。相手が優秀であればあるほど、その範囲の中での結論は、揺るぎなく正確に見える。だからこそ、その結論をそのまま「サイト全体の話」として受け取ってしまいやすい。狭い範囲の答えが間違っていたことは一度もない。ただ、それがサイト全体の答えだと思い込んでしまう瞬間が、いちばん危ない。
狭い範囲を渡したのは俺だ
相手が勝手に狭い範囲で調べたのではない。狭い範囲を選んで渡したのは俺自身だ。「この5本を確認してください」という依頼の文面には、比較のための過去の記事も、サイト全体の傾向も、一切添えていなかった。確認を頼むとき、こちらが渡した範囲の外は、相手には最初から見えていない。渡された範囲の中で正確な答えが返ってきたとき、その答えは「渡した範囲の中で」正確なのであって、サイト全体で正確だとは限らない。この違いを、頼む側が忘れずに持っておかなければならない。頼む相手が優秀であるほど、返ってくる答えは自信を持って正確に見えるので、この違いはむしろ見えにくくなる。
今回のことで言えば、事前に4日前や12日前の記事も一緒に渡していれば、最初から違う指摘が返ってきていたかもしれない。4日前の5本は2件から6件、12日前の5本も0件から4件と、記事番号だけのリンクをすでに何本も持っていた。それを俺が自分で知っていながら、依頼のときには渡していなかった。あるいは「この5本以外のサイト全体では、こういう傾向です」という一言を添えて渡していれば、相手はその情報も踏まえて指摘を出せたはずだ。今回はそのどちらもしなかった。依頼する側が防げることは、意外と多い。範囲を絞って頼むこと自体は悪くない。絞った範囲を、頼む側自身が忘れずに持っておくこと、そして必要なら、その範囲の外の情報も一緒に渡すこと。この二つが、今回抜けていた。
範囲を広げても、消えなかったもの
「書式だから問題ない」で止まりそうになった
ここまで読むと、「結局、範囲を広げて数え直したら、直さなくてよかった」という話に聞こえるかもしれない。実際、91本まで広げた時点で、俺は一瞬「これはサイト全体の書式なんだから、問題ない」と考えて手を止めかけた。だが、そこで安心して止めてしまうと、別の層に埋もれていた問題を見落とすところだった。範囲を広げて出した結論を、そのまま「今回の件は終わり」に使うのは危うい。範囲の広さは、問題の有無まで教えてはくれない。
記事名が本文に出てこないリンクが2つ
指摘された9箇所を、もう一度ひとつずつ開き直した。すると、そのうち2箇所は、リンクの直前や周辺の文章の中に、飛び先の記事の名前が一度も出てこない書き方になっていた。読者は、リンクの文字が記事番号だけで、しかも周りの文章にも記事名の手がかりが一切なければ、クリックする前に何の記事なのか判断する材料がまったくない状態になる。これは書式の話ではなく、読者の体験そのものの問題だった。範囲を広げたことで「書式は標準だから問題ない」と結論づけてしまいそうになったが、その多数派の中に、書式とは別の層の問題が混ざっていたのだ。この2箇所は、周辺の文章に記事名を足す形で直した。番号だけの書き方自体は残しつつ、その手前の一文に、飛び先が何の記事かを一言添える。これなら、サイト全体の統一感を崩さずに、読者にとっての手がかりだけを増やせる。今回の件は「全部直す」でも「全部そのままにする」でもなく、「範囲の中身をもう一段分けて考える」ことで落ち着いた。
ここで持ち帰りたいのは、「範囲を広げれば正しい」という単純な話ではない、ということだ。今日の5本という狭い範囲では、1744が例外に見えた。91本という広い範囲では、1744のほうが標準に見えた。どちらの範囲で見た答えも、それぞれの範囲の中では正しい。だから、どちらか片方の範囲だけを採用して「これが正解」と決めるのではなく、範囲を変えて、両方の答えを並べておくことが大事だと思う。狭い範囲の答えは「今日の5本という条件下では」、広い範囲の答えは「サイト全体という条件下では」——そうやって条件を添えて両方を持っておけば、次に同じような数字を見たときも、あわてずに済む。そして今回のように、広い範囲の答えを採用したあとにも、記事名の抜けという別の層の問題は残っていた。範囲を広げたことは、問題を消したのではなく、見るべき問題の種類を変えただけだった。
俺自身も、同じ形で踏んでいた
仲間への連絡に書いた数字と、抜けていたもの
正直に書いておく。今回のリンクを調べ始めた最初の段階で、俺はまず手早く数えるために、簡単な文字列検索を使った。公開中の記事だけでなく、下書きも含めた全1,362ファイルを対象に、記事番号だけの文字を持つリンクを検索したら、557件という数字が出てきた。数え方も範囲も粗い、いわば速報値のようなものだったが、9対0という今日の5本の差に気を取られていた俺は、この557という数字を、日々やりとりしているチームの仲間に伝える連絡の中に、そのまま書いてしまった。「全部で何件の中の557件か」——公開中の記事だけなのか、下書きも含むのか——を、一言も添えなかった。受け取った相手は、その数字をそのまま参考にしようとしていて、範囲の説明が抜けたまま伝わりそうになっていた。
その後、この記事で書いてきた手順どおり、数える道具をHTMLの構造を読み解く部品に作り直し、範囲も公開中の91本、記事間リンク869本の中に絞って、あらためて数え直した。結果は546件だった。557という粗い数字をすでに仲間に渡してしまっていたので、546という、範囲も数え方も違う数字を、あとから追いかけて訂正する形になった。もし557を書いたときに範囲を書き添えていたら、この訂正はもっと短く済んでいたはずだ。
さらに皮肉なことに、546への訂正を伝えるとき、俺は「今回は数える範囲を確認したから、大きな取り違えをせずに済んだ」という趣旨のことを、まず先に書いた。数える範囲を確認したことを教訓として書きながら、その訂正の文章自体には、546が何件の中の546件かを、最初は書いていなかったのだ。指摘された側を「範囲を狭めた」と書く資格が、自分にあるのかどうか、この時点で少し考え込んだ。教訓は、書いた瞬間にこそ、いちばん自分の目から見えなくなるのかもしれない。書いた本人が、自分の書いたものを読み返して初めて気づく、というのは今回に限らず何度も経験していることだ。今回は、それに気づいたのが自分だったので、まだ幸いだった。気づいたあと、その一文には「546本という数字は、記事間リンク869本の中の数字です」と一言足して書き直した。557から546への訂正そのものは、方向としては正しかった。抜けていたのは、その訂正を伝える書き方のほうだった。
明日から変えられること
見ている範囲の外を、先に疑う
今回の一件から持ち帰れることは、シンプルだと思う。サイトの一部を見て「この書き方は間違っている」と判断する前に、サイト全体で同じ形が何件あるかを数える。数える前に判断すると、多数派を例外だと決めつけて直しにかかることが、普通に起こる。今回、俺は9件対0件という、これ以上ないほど分かりやすい差を見せられて、一度は判断しかけた。数字がきれいに割れているほど、それが全体でも同じだと錯覚しやすい。差が大きいほど疑わなくていい、というのは逆で、差が大きいほど一度は範囲を広げて確かめたほうがいい。差が小さければ「そういうこともあるだろう」で流せるが、差が大きいときほど、その大きさに引っ張られて判断が早まる。
確認を頼むときは、渡した範囲を伝える
もう一つは、確認や監修を誰かに頼むときの伝え方だ。「この範囲を見てください」と頼むこと自体は問題ない。むしろ、範囲を絞らないと相手の負担が大きすぎる場面もある。大事なのは、その結果を受け取ったあと、自分の中で「これはサイト全体の話」に格上げしないことだ。渡した範囲と、結論が当てはまる範囲は、常に一致するとは限らない。頼む側が、渡した範囲を自分でも忘れずに持っておく必要がある。次に同じことを頼むときは、依頼の文面に「今回はこの範囲だけを見ています」と一行添えるだけで、この取り違えはかなり防げるはずだ。頼まれた側にも、渡された範囲を結果と一緒に書き添えてもらう習慣があれば、なお良い。
揃えると決めたときに、先に決めておく三つ
では、数え直して「これは書き方だった」と分かったあと、揃えるかどうかはどう決めるのか。少数だと確定したものは、その場で直してよい。記事から記事へのリンクで番号だけになっていた3件は、1,362ファイルを見ても3件しかなく、他はすべてタイトルを書いていた。こういうものは例外と呼んで差し支えないし、迷っている時間のほうが高くつく。
問題は多数だと分かったほうだ。546本を一括で置き換える前に、少なくとも三つは決めておく必要がある。一つ目は、その中に引用が混ざっていないか。当時の画面や当時の文章をそのまま引いている箇所は、書き換えると記録そのものが変わってしまう。飛び先を新しくするのは正しい修正でも、引用文の中の番号を書き換えるのは、過去の改ざんになる。二つ目は、段階的にやるかどうか。これから書くものだけ新しい書き方に揃えて、過去のものは触らない、という選択は十分にありうる。三つ目は、誰が決めるのか。546本の書き方は、サイトの読み心地そのものに関わる。一人の判断で夜のうちに書き換えてよい種類のものではない。
今回、俺はこの三つのどれも決めていなかった。だから直さなかった。これは「直す必要がない」という結論ではなく、「まだ決めていない」という状態だ。この二つを混同すると、次に同じものを見たときに「前回、問題ないと確認済み」という記録だけが残り、決めていないことすら見えなくなる。だから記録には「判断を仰ぐ案件」と書き、決まるまでは触らないことにした。
「例外」と「標準」を分けるのは、書き方の良し悪しではなく、件数だけだ。そしてその件数は、数える範囲を変えれば、あっさりひっくり返る。だからこそ、範囲を決める最初の一手が、結論そのものを決めてしまう。今回は、たまたま4日前と12日前の記事にも同じ手を伸ばしたから逆転に気づけた。もし今日の5本だけで判断を止めていたら、この記事自体が生まれていなかったし、サイト全体の63パーセントを書き換えるという、余計な作業に手をつけていたはずだ。
当サイトの現在地
この連載では、記事の中で紹介した確認の姿勢を、当サイト自身がどこまでできているか、正直に書くようにしている。今回の件でいえば、こうなる。
✅ 当サイト実施済 記事を公開したあとに、実際のページを開いて確認する。今回も5本すべてを開き、表示や画像を確認した。公開して終わりにせず、必ず自分の目でページを開く、という基本の手順は、今回もきちんと守れていた。
✅ 当サイト実施済 リンクの飛び先が正しいかを、記事のタイトルで突き合わせる。番号だけの照合では、飛び先が別の記事にすり替わっていても気づけない。今日の5本でも、この突き合わせ自体は先に済ませていたので、飛び先そのものが間違っている、という事態は起きていなかった。
🔧 当サイト着手中 「この書き方は誤りか、それとも標準か」を、直す前にサイト全体で数える。今回、初めてこれをやった。これまでは、目の前の対象だけを見て判断することが多かった。今回のように91本すべてを数え直すには手間がかかるので、まずは「差が大きく見えたときだけ、範囲を広げて確かめる」というところから、少しずつ習慣にしていきたい。
🔧 当サイト着手中 確認を誰かに頼むとき、こちらが渡した範囲を明示して伝える。今回は伝えていなかった。次からは、依頼の文面に「この範囲の中だけを見ています」と一行添えるようにしたい。渡す範囲を書くだけの、ほんの一手間だが、今回のような取り違えを未然に防げる一手だと思っている。
🔧 当サイト着手中 新しい仕組み(今回でいえば用語のハイライト)を足したとき、それがサイト内の別の確認作業に影響しないかを、同じタイミングで見直す。今回、その見直しが後回しになっていた分、取りこぼしに気づくのが遅れた。仕組みを足すたびに、確認する道具の一覧をあわせて見直すところまで、いずれ手順に組み込みたい。
まとめ — 分かれたのは、何件の中で数えたか、だけだった
今日起きたことを、もう一度短くまとめる。同じサイトの、同じ書き方を、同じ日に、2人が正しく数えた。片方は今日の5本という範囲で、9件対0件という結果を出した。もう片方は91本という範囲で、63パーセントがその書き方だという結果を出した。どちらも計算に誤りはない。分かれたのは、何件の中で数えたか、それだけだった。
そしてその範囲を決めたのは、確認を頼んだ側、つまり俺自身だった。狭い範囲で測られたのではない。狭い範囲を渡したのだ。この違いを忘れずにいたい。範囲を広げても、記事名の抜けという別の問題は残っていた。範囲を広げれば正しい、という単純な話でもない。両方の範囲で数えて、両方の答えを並べておくこと。それが、今日できた一番の学びだった。9対0という差の強さに背中を押されて判断しかけた自分を、範囲を広げて数え直した自分が、あとから止めた形になる。同じ日の自分同士でも、こういうことは起きる。
WEBサイトの運営には、こういう場面が意外とたくさんある。一部を見て「これは問題だ」と気づいた瞬間の直感は、たいてい正しい。だがその直感を、そのまま全体への判断に広げる前に、一呼吸置いて、見ている範囲がどこまでかを確かめる。それだけで、今日のような逆転に振り回されずに済む。今日は幸い、逆転に気づけたおかげで、サイト全体を余計な形に書き換えずに済んだ。同じような差を見せられたとき、次はもう少し早く、範囲を広げる一歩を踏み出したい。
指摘そのものを疑う必要はまったくない。むしろ今日の一件は、独立して確認してもらう手順があったからこそ気づけた話でもある。もし誰にも確認を頼まず、自分の目だけで見ていたら、そもそも1744の書き方に気づくことすらなかっただろう。確認を頼む相手を疑うのではなく、確認を頼むときに自分が渡している範囲を疑う。今回の教訓は、その一点に尽きる。
合わせて読みたい記事として、「リンク切れ0本」も「200が返る」も、まだ2段目だった ── 番号が変わるサイトで見つけた、リンクの3段目のずれでは、リンクが「在る」ことと「飛び先が正しい」こと、さらに「文字が飛び先と一致している」ことの違いを掘り下げている。今回のリンクの文字の話とあわせて読むと、リンクという一つの仕組みに、いくつもの層が重なっていることが見えてくるはずだ。
また、「0件」は安心ではない、「N件」は危険ではない ── 同じ1日に、サイトの調べ方が両方向に外れたや、『0件には三つの顔がある』と書いた記事が、三つ目の顔を踏んでいたも、今回と同じ「数える」という行為そのものの落とし穴を書いた記事だ。数字がゼロだから安心、数字が多いから危険、という単純な読み方では取りこぼすものがある、という点で今回の話とつながっている。
自分のサイトのリンクの状態が気になった方は、当サイトの🔧 WEBサイト内のリンク漏れ・チェックツールや🔧 WEBサイト総合分析・レポートツールを無料で使ってみてほしい。ただし今日書いたとおり、ツールが返してきた結果が「サイトのどの範囲を見た結果か」は、使う側が忘れずに持っておく必要がある。それを忘れなければ、道具はちゃんと役に立ってくれる。範囲を意識するだけで、同じ道具から見える景色は、かなり変わってくる。
今日の5本も、明日以降、サイト全体の範囲で見直すたびに、また新しい発見が出てくるかもしれない。1回の確認で終わりにせず、範囲を変えて何度か見直す。この連載でこれまで繰り返し書いてきたことだが、今日また同じ形で、それを自分に突きつけられた気がする。数える手間を惜しまないことが、結局いちばんの近道になる。今日はそれを、また一つ実感した一日だった。
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